清楚で気品にみちた、ホワイトフローラルの代表格。
スズラン(ミュゲ/リリーオブザバレー)は、グリーンなニュアンスの効いた、華やかですっきりとした香りです。
リアルなものから、石鹸を思わせるような清潔感が際立ったもの、「フローラル」を極めた美麗なもの、繊細で芸術的なものまで、魅力は様々。
使うほどに手放せなくなる、親しみやすい香水たちです。
詳しい選び方のアドバイスは、それぞれの香水の特徴を紹介した後の、記事末尾にて。
もくじ
クリスチャンディオール ディオリッシモ(写実的×芸術性)
クリスチャンディオール ディオリッシモ
* Christian Dior Diorissimo *
香調:フローラル <レディース>
フェミニンで芸術的。
風と陽光を感じる、清々しい香りです。
1956年発表 * 調香師 Edmond Roudnitska
<トップ> ベルガモットの明るくフルーティーなシトラス感がゆったりと広がり、グリーンリーフが清々しい草や葉の青さを絡めます。
<ミドル> リリーオブザバレー(スズラン)の清潔感あふれるグリーンニュアンスのフローラル感があふれだし、ライラック(むらさきはしどい)が蜂蜜に花粉を混ぜたような涼やかな甘さを、ジャスミンがサラリとしたセンシュアルなグリーン感を絡める。そこに、リリー(ゆり)が光沢のあるスパイシーな、ボロニアが滑らかで明るいフローラル感で香りに奥行きを出し、イランイランがバナナトーンの濃厚な甘さを、アマリリスが桃ニュアンスのロマンチックな華やかさを、ローズマリーがスッと鼻に抜けるようなクリーンなハーバル感を添えます。
<ラスト> シベ(ジャコウ)のふんわりと発光するような温かなアニマル感がゆったりと広がり、サンダルウッド(白檀)が優しくミルキーなウッディー感を絡めます。
*明るいシトラス&グリーンが、涼やかで繊細なすずらん系フローラルミックスへと高まり、ゆっくりと、アニマリックなウッディーに落ち着きます。
大草原に咲くすずらんを絵画に描いたような、写実性と芸術性が混じり合った香り。
クリアで甘さ控えめ。スズランのスッキリとしたグリーンニュアンスが煌びやかに表現されている反面、あたたかな陽光を思わせる、優雅でフェミニンなフローラルミックスがしっかりとベースに効いており、生花のようにリアルな「スズラン」らしさを楽しめると同時に、香水としての完成度や使い心地もばっちり。
また、シベやイランイラン等の作り出すセンシュアルな表情が「香り」というよりは「気配」のように全体を包み込んでいて、上品なのにどこか妖艶な、独特の存在感があります。
青みがどう出るかで評価の分かれやすい香りなので、香りを試す際にはムエット(紙)でなく、直接お肌につけてみることをおすすめします。
[持続性] ★★★☆☆ [拡散性] ★★☆☆
[TPO] 春・夏・秋 / デイタイム・ナイトタイム
サンタマリアノヴェッラ スズラン(生花系)
サンタマリアノヴェッラ スズラン
* Santa Maria Novella Mughetto *
香調:フローラル <ユニセックス>
シャープで野性的。
グリーン調のリアルなスズランです。
<シングル> リリーオブザバレーの清楚な華やかさと、陽光と色味を感じられる鮮やかなグリーン感が、すっきり、晴れやかに広がります。
*生えてるそのまま系の、青みが強いスズラン。
フレッシュな明るい表情に野性的な青みがストレートに絡んだ、清々しい香り。
生花的なえぐみを含んだリアルなスズランの香りがサアアッ!と広がる、アロマオイルのような力強さとナチュラルな植物っぽさが魅力です。
体臭との馴染み方が素晴らしく、付けたての青みが飛んだ後は徐々にサンタマリアノヴェッラ特有のパウダリー感が出て来て、香り自体はあまり変化しないまま、まろやかなトーンに落ち着きます。
スズラン好きにはたまらない精妙な生花感と、嗅ぎ疲れしないマシュマロのようなパウダリー感が融合した、完成度の高い作品です。
[持続性] ★★★☆☆ [拡散性] ★★☆☆
[TPO] 春・夏・秋・冬 / デイタイム・ナイトタイム
ペンハリガン リリーオブザバレー(天然香料)
ペンハリガン リリー オブ ザ バレー
* Penhaligon`s Lily of the Valley *
香調:フローラル・グリーン <レディース>
クリーミーで美麗。
イランイランやレモニーなキラキラ感の効いた、女性らしい香りです。
1976年発表 * 調香師 Michael Pickthall
<トップ> ベルガモットのフルーティーで明るいシトラス感に、レモンがキラキラとした酸味を、ゼラニウムが薔薇ニュアンスのハーバルな華やかさを絡めます。
<ミドル> リリーオブザバレーの繊細で青みのある香りがゆったりと広がり、ジャスミンが草の葉に似た洗練されたセンシュアル感を、イランイランがバナナトーンの濃厚で甘いエキゾチック感を、ローズが優美な華やかさを絡めます。
<ラスト> オークモスの森の地面のような苔むした苦みが低く広がり、サンダルウッド(白檀)がミルキーで甘いウッディー感を添えます。
*ハーバルなレモンの香りが、エキゾチックでセンシュアルなすずらんへと華やぎ、ふんわりと、静謐な森の香りへ落ち着きます。
キラキラとした酸味とクリーミーな質感が美しい、フレッシュな香り。
「幻想的でパーフェクトなスズラン」を具現化したような、感動に満ち、丁寧に作りこまれた作品です。
グリーンフローラル的な清潔感を前面に出しつつも、不思議なほどしっとりフェミニンな印象に仕上がっており、また、ドライダウンの、それまでの明るく華やかな雰囲気をス……ッと風雅に畳んでいく静けさが、一片の詩のように雄弁。
甘さも青さもパウダリー感も、すべてが調和したクラシカルなフローラルの香りなので、その複雑さを「香水らしい」といえば「香水らしい重さを持った香り」とも言えますし、人工っぽさを抑えた天然香料独特の澄んだトーンを求める者にとっては「とてもナチュラルな香り」とも言えます。生々しくスズランの花の香りを再現しようとしたものではなく、「ペンハリガンの世界観でスズランを再構築して、美を追い求めた創作香水」といった趣き。
これまで様々なスズラン系の香水を試してもピンと来なかったという人に、特におすすめします。
[持続性] ★★★☆☆ [拡散性] ★★☆☆
[TPO] 春・夏・秋・冬 / デイタイム
ジェシカマクリントック(石鹸系)
ジェシカ マクリントック
* Jessica McClintock Jessica McClintock *
香調:フローラル <レディース>
清楚でフェミニン。
根強い人気の、明るいホワイトフローラル香水です。
1988年発表
<トップ> レモンのきらきらとした明るいシトラス感がゆったり広がり、ベルガモットが上品な苦みと酸味を、カッシア(ブラックカラントの葉)とバジルがほんのりスパイシーで鮮やかなグリーン感を絡めます。そして、イランイランがエキゾチックで濃密な甘いフローラル感を、ブラックカラント(カシス)がピリリとしたフルーティーな甘酸っぱさを添えます。
<ミドル> リリーオブザバレー(すずらん)の透明感と癒しに満ちたグリーンフローラル感があふれ出し、ジャスミンが草の葉ニュアンスの落ち着いたセンシュアル感を、ローズがフェミニンな華やかさを添えます。
<ラスト> ムスクの優しい甘さがパウダリーに広がり、ウッディーノートがソフトな木や茂みのニュアンスで香りに深みを出します。
*生き生きとしたシトラス&グリーンが、フェミニンなスズランへと高まり、ゆったりと、静かなムスクに落ち着きます。
80年代、90年代系のホワイトフローラル香水の雰囲気。(もう一世代前の主流のものほど重量感やパウダリーさ、複雑さはなく、かといって現在主流のようなライトな印象のものとも異なる、控えめだけどしっかり「フラワー!!」な趣きです)
「ディオリッシモ」や「ヤードレー」と同じくジャスミンやグリーンなどがバランス良く混ざった香りですが、それらの中でもこの「ジェシカ マクリントック」は、特にフェミニンで優しい表情。
スズランのもつ清楚なグリーンニュアンスは大切にしつつ、他はまろやかで明るめ。石鹸のような優しいトーンに整えられた、ピュアなフローラルブーケです。
洗いたてのタオルのような安心感と清潔感にみちていて、つけているときは空気のように寄り添ってくれるからすっかり忘れてしまうのに、ふとクラッと恋しくなる、なんともノスタルジックな香りです。
[持続性] ★★★☆☆ [拡散性] ★★☆☆
[TPO] 春・夏・秋・冬 / デイタイム・ナイトタイム
ウッズオブウィンザー(グリーン系)
ウッズオブウィンザー リリーオブザバレー
* Woods of Windsor Lily of the Valley *
香調:フローラル・グリーン <レディース>
静かでハーバル。
すっきりとしたグリーン調です。
1974年発表
<シングル> リリーオブザバレー(すずらん)のピュアでクリーンな香りがゆったりと広がり、オレンジブロッサムがフレッシュな甘さを、グリーンリーフ(草や葉のミックスノート)が夏の草原を思わせる鮮やかな青さを絡める。そこに、レモンがきらきらとした明るい酸味を、ゼラニウムがシトラスニュアンスのハーバルな華やかさを、ムスクが澄んだパウダリー感を添えます。
*青々しさに酸味の混じった、スッキリ系すずらん。
フローラルにフォーカスしたタイプではなく、「すずらんが咲く草原」をパチリと切り取ったような香り。
かなりグリーンで、シトラス系の酸味やハーバル感もがっつり混ざっています。ムスクはクッション材程度に柔らかさを添えてはいるものの、石鹸系のようなパウダリーな甘さはありません。
とはいっても難解な複雑さや尖ったところはまるでなく、清潔、清浄。まさに「グリーン&ホワイトフローラル from 英国庭園」といった素朴さとマナーの良さが同居した、シンプルで気持ちの良い香りです。
[持続性] ★★☆☆☆ [拡散性] ★☆☆☆
[TPO] 春・夏・秋 / デイタイム
エスティローダー プレジャーズ(フローラルブーケ)
エスティローダー プレジャーズ
* Pleasures Estée Lauder *
香調:シアー・フローラル <レディース>
明るくエレガント。
ローズやライラックが香る、フェミニンなフローラルミックスです。
1995年発表 * 調香師 Annie Buzantian, Alberto Morilla
<トップ> ホワイトリリ―(白百合)のスパイシーで蝋のようなニュアンスの甘いフローラル感があふれ出し、バイオレットリーフ(スミレの葉)がウォータリーでモダンなグリーン感を、グリーンノート(草や葉のミックス)が鮮やかな色彩感を絡めます。
<ミドル> ブラックライラックとジャスミンが、草の葉にミツバチ花粉を混ぜたような華やかで甘いグリーンフローラルの絨毯を広げ、カロカロンデが洗練された華やかでセンシュアルなエキゾチック感を、ホワイトピオニーがフレッシュな甘酸っぱさを、ベイローズがロマンチックなフローラル感を香り立たせます。
<ラスト> サンダルウッド(白檀)のクリーミで落ち着いたウッディー感が柔らかく広がり、パチョリが爽やかなハーバル感を、ムスクがソフトなパウダリー感を添えます。
*ホワイトフローラルのすっきりとした華やかさを軸に、瑞々しいグリーンニュアンス、フェミニンなローズ&ピオニーニュアンスを経て、ソフトなムスキーノートへ落ち着きます。
この世の花といった花を集めて「エデンの園」を描いたような、狂おしくも甘美、そこはかとなくハッピーな香り。
「すずらん!」といった香りではないのですが、すずらん香水(清楚系ホワイトフローラル)をお好きな方の中で、特に「フローラルブーケ」系をお探しの方に最適。
清潔感や明るさを重視した嫌味のないフローラルで、グリーン感は抑え目。フェミニンな甘やかさに満ちつつも、時折のぞく芯の強さやフレッシュ感が香りをワンランク上のものへと押し上げている、バランスの良い一本です。
「毎日使えて飽きのこない、フローラルブーケ香水のおすすめは?」と聞かれたら間違いなく候補にあげる、どんな時でも心地よい、安定感抜群の香りです。
[持続性] ★★★☆☆ [拡散性] ★★☆☆
[TPO] 春・夏・秋・冬 / デイタイム
武蔵野ワークス すずらん(石鹸系)
武蔵野ワークス 和の花 すずらん
* Musashino Works Suzuran *
香調:フローラル <レディース>
淡くて清らか。
お風呂上りのような、曖昧なフローラルの香りです。
<トップ> グリーンノートのすっきりとした青みが広がります。
<ミドル> すずらんの明るく澄んだグリーンフローラル感に、ジャスミンが綺麗系のサラリとした爽やかさを、イランイランがフェミニンな甘さを添えます。
<ラスト> ムスクのピュアなパウダリー感が優しく広がり、オークモスがアーシーで落ち着いたグリーン感を絡めます。
*爽やかなグリーン感が、柔らかなホワイトフローラルへと華やぎ、ふんわりと、静かなムスクに落ち着きます。
どこかで嗅いだような、あっさりとした「すずらん」の香り。
植物としてのスズランそのものよりも、「すずらんの香り」という言葉からイメージされる(or期待される)「すっきりとした日本製の石鹸の香り」を表現しようとしたような、曖昧で優しいフローラルミックスです。
[持続性] ★☆☆☆☆ [拡散性] ★☆☆☆
[TPO] 春・夏・秋・冬 / デイタイム
ステラ マッカートニー L.I.L.Y(トリュフが香るシプレ系)
ステラ マッカートニー L.I.L.Y
* Stella McCartney L.I.L.Y *
香調:シプレ・フローラル <レディース>
不思議?モダン?
ステラの遊び心あふれる、マスキュリンな香り。
2003年発表 * 調香師 Jacques Cavallier
<トップ> ブラック・トリュフの動物的でムスキーなキノコ臭がエアリーに広がり、ブラックペッパーがキリリとした温かみのある辛さを絡めます。
<ミドル> リリーオブザバレー(すずらん)のすっきりとした明るいグリーンフローラル感があふれ出し、ピンクペッパー(ポワブルロゼ)が軽やかでモダンな薔薇ニュアンスを添えます。
<ラスト> オークモスの苦く苔むした森の地面の香りがゆったり広がり、パチョリがハーバルなスパイシー感を、ムスクとアンブレット(ムスクマロウ/植物性)がほんのりメタリックな甘いパウダリー感を絡めます。
*芳ばしいトリュフ&ペッパーが、モダンなスズランの香りへと華やぎ、ゆっくりと、ムスキーなシプレノートに落ち着きます。
トリュフを用いた、一風変わったクールな香り。
キノコ臭というよりも、何かアニマリックな匂いが前に出ています。
シプレ系なのですが、どこかマリン系の爽やかさも混ざっていて、全体としては「メンズ香水のような方向性を持ちつつ、なんとなくレディース香水らしいフローラルにとどまっている」ような印象。
すっきりとしたハンサムなスズラン&シプレのグリーン感に、たっぷりと効いたクリーンなムスク、控えめな甘さが、とても美人で都会的です。
マスキュリンな雰囲気が好きで、かつ「トリュフの香りだなんて面白い!」と目をキラキラさせちゃうチャレンジャーな方には、とても楽しめる一本。
かなり付ける人の性格を選ぶ香水ではありますが、カジュアルからフォーマルなシーンまで幅広く使え、意外なほど周囲へのうけも良い、優秀な香りです。
[持続性] ★★★☆☆ [拡散性] ★★☆☆
[TPO] 春・夏・秋 / デイタイム
キャロン ミュゲドボヌール(天然香料)
キャロン ミュゲ ド ボヌール
* Caron Muguet du Bonheur *
香調:フローラル <レディース>
クラシカルで夢想的。
天然香料のみを使用した、ロマンチックな香りです。
1952年発表 * 調香師 Michel Morsetti
<トップ> リリーオブザバレー(すずらん)の柔らかなグリーンフローラル感を中心に、ネロリ(ビターオレンジの花から採れる精油)がシトラス調の明るさを含んだ清らかな華やかさを、オレンジブロッサムが清潔感とフレッシュ感を、ベルガモットが落ち着いた苦みと酸味を絡めます。
<ミドル> リリーオブザバレーの透明感あふれるロマンチックなフローラル感が優しく広がり、ライラック(紫丁香花)がミツバチ花粉のような硬質な華やかさと涼やかな甘さを、ジャスミンがソフトで素直なグリーン感を絡める。そこに、マグノリア(木蓮)がフレッシュ感を、ローズが優雅なフェミニン感を添えます。
<ラスト> ムスクの澄んだパウダリー感に、サンダルウッド(白檀)がミルキーなウッディー感を、ヘリオトロープがナッツとバニラを混ぜたようなまろやかな甘さを絡めます。
*シトラス調の明るいフローラルが、フェミニンで繊細なフローラルブーケへと高まり、ゆっくりと、曖昧で芳ばしいムスクに溶けていきます。
幼い頃に読んだ、絵本の中の幻の草原。
陽の光と異国の風を封じ込めたような水彩画の滲みに、作者の優しい視線の中で微笑む、永遠に咲き続けそうな花々。
そんな夢想的な光景を香りで描いたような、とても芸術的な香りです。
グリーン感は比較的効いてはいますが、全体的に石鹸のような、柔らかで曖昧なフローラルにまとまっており、花粉のような、蜜のような、天然香料ミックス特有の不思議な甘さが残ります。
気品にみちたクラシカルな趣きなのに、ふわっと肌に馴染んで心の柔らかいところをくすぐる、幸せオーラを発する香り。
[持続性] ★★★★★ [拡散性] ★★★☆
[TPO] 春・夏・秋 / デイタイム・ナイトタイム
ヤードレー リリーオブザバレー(グリーン系)
ヤードレー ロンドン リリーオブザバレー
* Yardley Lily of the Valley *
香調:フローラル <レディース>
クリーンな石鹸系。
シャキッとした凛々しいスズランです。
2012年発表 * 調香師 Alberto Morillas
<シングル> リリーオブザバレー(すずらん)の清潔感あふれるシャープなフローラル感がゆったりと広がり、グリーンノートが芯のある力強い青みを絡める。そこに、ジャスミンが草の葉のような、フリージアがペッパーで艶やかな、ガーデニア(くちなし)が旨味のある芳醇なグリーン調の華やかさを添え、全体に深みとボリューム感を出します。
*グリーンが効いた、暗めホワイトフローラル。
石鹸のようなクリーンでバランスの良いフローラルに、素朴で写実的なグリーンを混ぜた香り。香りの変化は感じられませんが、少しずつパウダリーなムスクが顔を出してきます。
ストイックで凛々しい、グリーン系がお好きな方に。
[持続性] ★★☆☆☆ [拡散性] ★★☆☆
[TPO] 春・夏・秋 / デイタイム
アニックグタール ミュゲ(リアル系)
アニック グタール ル ミュゲ
* Annick Goutal Le Muguet *
香調:フローラル <レディース>
フレッシュで繊細。
ふわふわ優しいスズランの香りです。
2001年発表 * 調香師 Isabelle Doyen
<シングル> リリーオブザバレーの無垢で繊細なグリーンフローラル感があふれ出し、ベンゾイン(安息香)がバニラに温かみを足したような甘い樹脂の香りを絡める。そこに、ローズがバランスの良い優雅なフローラル感を、ベリー(ベリー系ミックスノート)がすっきりとしたフルーティーな甘酸っぱさを添えて、香りに深みと奥行きを出します。
*繊細でリアルなスズラン。
すずらんの「花」にフォーカスした、アニックグタールらしいロマンチックなフローラルの香り。
グリーン感は控えめ。ベリーやローズはそれ自体が主張する感じではなく、ほんのりと酸味や華やかさのバランスをとっている、影の脇役といった雰囲気です。
「リアル」といっても植物学者が花を隅々まで分析したようなリアルさではなく、モネの絵のような、一瞬の輝きを捕まえて、善良な人間にだけ通じる甘い囁きでその感動を伝えてくるような、心の目を通した、科学では測れない種類の「リアル」。
石鹸のようなフレッシュで明るい表情の奥に、クリーミーな樹脂の甘みが独特の複雑さとまろやかさを湛えた、ふっくら膨らんだスフレケーキのように豊かで繊細、夢心地な香りです。
[持続性] ★★★☆☆ [拡散性] ★★☆☆
[TPO] 春・夏・秋 / デイタイム
フローリス リリーオブザバレー(グリーン系)
フローリス リリーオブザバレー
* Floris Lily of the Valley *
香調:フローラル・グリーン <レディース>
ソフトでタイムレス。
ナチュラルで瑞々しい香りです。
1847年発表
<トップ> グリーンリーフの爽やかな青みがふんわりと広がり、レモンがキラキラした明るい酸味を絡めます。
<ミドル> リリーオブザバレーの青さをはらんだそよ風のような香りがあふれ出し、ジャスミンが草の葉ニュアンスの落ち着いたホワイトフローラル感を、ローズがフェミニンな華やかさを、チュベローズ(月下香)がクリーミー感とフレッシュ感を添えます。
<ラスト> ムスクのほんのり甘いパウダリー感が、淡く残ります。
*明るいグリーン感が、フェミニンなスズランへと華やぎ、ふんわりと、ほのかなムスクに落ち着きます。
クラシカルなフローラルブーケをベースに、スズランの爽やかな青みと、柔らかなグリーン感が際立った香り。
ウォータリーでフレッシュ。ナチュラルで酔いにくい、使い心地の良い一本です。
「ヤードリー」ほどグリーンでもムスキーでもなく、「ディオリッシモ」系ほど複雑なフローラルブーケでもなく。
強い香りが苦手で、シンプル、すっきりとした「ホワイトフローラル」をお探しの方に。
[持続性] ★★☆☆☆ [拡散性] ★☆☆☆
[TPO] 春・夏・秋・冬 / デイタイム・ナイトタイム
香水を選ぶポイント
スズランは薔薇、ジャスミンと並び「三大フローラル」と称される香りですが、その花は熱に大変弱く、実際には「スズランの花の香りそのまま」の香料を取ることができません。(精油は微量ながら採れるには採れるのですが、すずらんの花から漂う香りとはかけ離れた香りのものしか抽出できないため、「“すずらんの香り”を作るための香料」として使用されることはありません)
そのため、「スズランの香り」と呼ばれるものは全て、パフューマーがそれぞれに本物の花の香りを再現しようと試行錯誤して作り上げた合成香料によるものか、様々な天然香料を調合したものです。
機械で測定すると、ヒドロキシシトロネラールやリラール、ゲラニオールなど、多くの花々に含まれる香気成分が確認されるのですが、「これが“スズランの香り”の正体だ!!」といった特徴的な成分や配合は見つかっていません。
そのため、「すずらんの香り」そのものの性質が、ある意味とても普遍的で、ゆえに親しみやすく、それでいてどこか完璧を感じさせる神秘的な趣きがある、といっても過言ではないと思います。
身近なようで千差万別で、お気に入りに出会うのが難しい「すずらん香水」。
好みの一本を見つけるポイントとしては、まず、
「スズランの香りはグリーンなニュアンスの、明るくすっきりとした香り」、といった基本性質に加え、
1.青みの効いた香りかどうか(これが結構、好き嫌いの分かれる部分です)
2.「清楚」や「清潔」「気品」といったイメージ先行型のものなのか、リアル志向なものなのか、「ホワイトフローラル」に溶け込んだグリーン系のものなのか、すっかり「フローラル」なものなのか。
(巷にあふれる様々な香り付き製品の中には、実際の「スズランの花」の香りを目指したもの以外にも、「バラ系のフローラルブーケの香り」の対抗馬としての「甘くない・グリーンの混じったフローラルの香り」にスズランの名前が象徴的に使われていることもあるので、本当に生花のリアルな「スズラン」の香りが好きなのか、それとも何か「すずらんの香り」と称する製品で好きになったのかを思い出してみると、香りを選ぶヒントになります。後者の場合はあまりグリーンが効いてないもの、フローラルブーケ系や石鹸系がイメージに近かったりします。)
3.ベースノート(ラストノート)が好みかどうか。
(香りの「重さ」の感じ方につながることからも重要な要素ですが、トップやミドルの雰囲気のまま最後まで「すずらんトーン」のものもあれば、わりと表情が変わってしまうものもあるので、お試しの際はぜひその辺りの「スズラン以外の部分」にも注意してみると、長く愛用できる香りを選ぶことができます。
特に石鹸系をお探しの場合は、ムスクなどパウダリーな甘さがどのくらい効いているかを重視すると、最終的な満足度が高まる傾向にあります。)
青みがどのくらい立つか、もしくは気になるかは、付ける方の肌や体臭との相性にも大きく依存しますので、香りを試す際にはぜひ『ムエットでなく、直接肌につけて』、ラストノートまでしっかり確認してください。
スズランに限らず、どんな香水を選ぶときにも当てはまりますが、最初に嗅いだ時に気になる点(例えば「青みがガツンときた」「酸味にびっくりした」「甘さを濃厚に感じた」等)は、その香水の最大の魅力であり、手に入れたくなる動機にもなりますし、また、使い続けていくうちにだんだんと慣れて気にならなくなってくる点でもありますが、更に使い続けるとある日突然、『やっぱり気になる!!!』と嫌いになるポイントにもなりがちです。(恋人のようですね!)
そのため、「香りを比較するうちにすっかり迷ってしまった」というようなときには、最初にトップからラストまでを通して嗅ぐ中で、(良くも悪くも)「気になる点が特になかった」香りをチョイスすると、何だかんだと使う頻度が高かったり、気付くと一本使い切ったりする「大切な香水」に化けてくれたりする確率が高まります。
清潔が当たり前の国では忘れがちですが、ふと、改めて「清潔って、尊いなあ」なんてしみじみしたり、癒されたり安心したりできる、スズランの香りの香水達。
なかなかイメージ通りの香りに出会えないテーマではありますが、使うほどに好きになれる、そんな香水が多いように思います。
私自身は、抽象的な香りの選び方が多い気がします(笑)
例えば、『お寺の香り』だったり、『外国人の香り』だったり。
気が付いたら、個性の強い香水ばかりが集まって来る。
具体的な香料の香りで選ぶのなら、『オークモス』、『イランイラン』、『ミルラ』、『オポポナックス』、『サンダルウッド』を軸にしてます。
基本的には、ベースノート重視ですな。
最近では、個性的な香りを求めて、中東アラブの香水を集めてます(笑)
代表的なのは、『راصّي(ラサシ)』。
日本では先ず手に入らないので、専らネットフリマで見つけて来る事が多いです。
中東アラブの香水は、欧米の香水とは一味違った雰囲気があり、欧米の香水には無い『沈香(ウード)』が使われていて、個性豊か。
最近では、欧米の香水メーカーでも、沈香を配合した香水が現れており、専ら中東向けに売られているケースが多いです。
異国情緒を漂わせたい時には、うってつけ(笑)
中東のメーカーの作った香水は、欧米向けに作られた物と、そうでない物とに分かれており、国内向けは、ムスリムの教義に則り、ノンアルコールパフュームになってます。
このノンアルコールパフュームのボトルが中々秀逸で、大変美しい装飾が施されています。
蓋は香水を取る為のスティックと一体となっており、スティックの先から香水を付ける仕様。
中東では、香水文化が盛んで、男女問わず香水を纏う人が多いそうです(^^)
中東の香水は欧米の香水に比べてユニセックス香水の割合が多いです。
専らスパイシーウッディが圧倒的だったり。
抽象的な香り、探すのが難しそうですが、素敵な香りが多そう(*´▽`*)
私は樹脂系やスパイス系、ウッディー系はベースノート重視、フローラル系はものによりけり、グリーン系やフルーツ系、マリン系はミドルノート重視で選んでます。・・・何だかんだトップノートに一目ぼれ(一嗅ぎぼれ?一鼻ぼれ?)してることも多いですが(笑)
なるほど、中東メーカーのものはノンアルコールなのですね!
以前お土産でエジプトかどこかの香水瓶を頂いたことがあるのですが、気密性が低いため、どうして現地ではインテリア扱いではなくきちんと香水を入れる香水瓶として使用され、機能しているのか不思議で仕方なかったのですが、揮発性の高いアルコールが含まれていないならば納得。
調べてみたところ、オイルタイプが主流なのだそうで、それならばあのタイプのガラス瓶でも実用に適していますね。長年不思議に思っていたことが、思いがけずすっきりしました!(笑)ありがとうございます(*´▽`*)
インドや中東の食文化、スパイス文化が大好きで中東の香水にも興味はあったものの、なかなか実際に手にする機会がなく。
今検索してみたところ、ラサシ他中東メーカーの製品、アマゾン海外版ならばいろいろ適正価格で取り扱っているみたいで、アマゾン販売分は薬事法的に日本への発送が可能かどうか不明ですが、アルコールの入っていないものであれば、マーケットプレイスの業者の中には日本へ発送してくれるとこもぼちぼちあるみたいです。
アラブ系の香水瓶って綺麗で新鮮!&公式サイト等見る限り香りや品質もとても良さそう&香油系はロールオンタイプの充実っぷりも素敵。あと、oud香水本当に種類豊富すぎ(笑)。オード&ローズのアラビアンで濃厚なやつが、とても欲しい…!
買ってみようかしら&海外アマゾンからの購入プロセス含めて記事にしたら需要あるかしら。(‘ω‘ )
香水のレディースやメンズ、特にシャネルやイブサンローランなどは常々「文化を作っていてすごいなあ」と感心していたのですが、中東の香水はユニセックスが多いとは、とても興味深い。世界中の香水を集めて文化考察したら、とても面白そうです(*’▽’)
私自身、気になる香水がある時は『fragrantica』という海外の香水サイトで香水を調べています。
ここのサイトは、気になる香水にどんな香料が入っているかが、画像入りで表示され、どの香りが強く出ているかも画像入りで表示されます。
他には、グラフで、香りの強さや、香りの持続性も表示されていて、選ぶ時の指標になってます(^^)
日本では出回ってない香水の情報も沢山あるので、見ていて楽しいですわ(^皿^)
このサイトにも無い香水は、他の海外サイトで調べる事もあります。
日本語サイトじゃ、香水の情報が少な過ぎるので、専ら海外サイトで情報を掴む事が多いです。
私の場合、香水を選ぶ時に重視するポイントとしては、
・ベースノートはしっかりしているか
・持続性は高いか
・お菓子系の香料が多用されていないか(バニラや蜂蜜は例外)
・香りは強いか(弱過ぎるのはNG)
・多層的な香りになっているか
・品格のある香りか
の6つのポイントを押さえています。
このポイントを押さえている香水は、クラシック香水に多いですね(^^)
総合的に判断して『良し!』と思った香水がコレクション入りします(^皿^)
フレグランティカ等、海外の香水サイトは私もいくつかチェックしていますが、中東系香水は本当に目から鱗でした。
良さそうなオード&薔薇のアラビアン香水、探してみます(*´▽`*)
私は香水も何事も、多少の好き嫌いはあれど「ありのままを受容し、良い所を積極的に見つけること」を大切にしているため、何だかんだどんな香りでもある程度好きです。
そのためか、その時々の気分で衝動的に手にする以上には、まだきちんと「自分の香りを選ぶ」ということはできていないので、こだわりを持って香りをえらんでいらっしゃる方や、「自分の香り」を持っている人にとても憧れます。
茉莉花さんの香水の選び方、とても素敵です(*´▽`*)
しかも本当にクラシック香水をはじめ上質な香水は大抵、その6つのポイントを確実にクリアしていますね(ノ*゚▽゚)ノ
茉莉花さんにとって「品格のある香り」とは、どんな香りですか?
私にとって『品格のある香り』は、いわゆる『正統派の香り』。
大半は廃番になってしまう物が多いですが、香水らしい香りの香水といえば、この手の香水。
所謂『香水の王道』とも言うべきか。
私にとって香水は、『香りの美術品』。
単に纏ってオシャレするアイテムではなくて、その美術品を纏い、自分もその美術品の一部になる感覚。
複雑で美しい香り程、じっくりと腰を据えてお付き合いする必要があります。
美術館を駆け足でササーっと見て『あー綺麗だったね』では、その美術品の本当の良さなんて分かりません。
じっくりと鑑賞する事に意味がある。
昔の香水も同じ事が言えます。
美術品を鑑賞する感覚で、じっくりと香水と向き合う。そうすると、その香水の本当の価値を知る事が出来るのです。
私自身は、その様な感覚で香水とお付き合いさせて貰ってます(^^)♪
長く愛されている物にはちゃんと理由がある。
流行り廃りのある香りを選ぶより、長く愛されている香りを選ぶ方が長く付き合っていけると私は思います。
なんだかんだ言って私自身は、かれこれ40種類も古い年代の香水を集めてます。まだ続々と増え続けてますが(笑)
アロマテラピーや薔薇の栽培を始め香り全般に興味を持ってきたのですが、その中でも香水は特別で、単に「良い匂いを嗅ぐ」という以上に、「自分の体から良い匂いや新しい匂いがする」ことによる心身への作用が、他の「匂いもの」とは一線を画しているように感じてきました。
茉莉花さんの『美術品の一部になる』という表現、とても素敵ですね。
香水の持つ懐の深さや、纏ったときに感じる独特の親密さに関して、私はずっと「体臭と混ざることによる脳の認識的な変化」だと思っていたのですが、そういった受動的なもの以上に、自ら積極的に「香りの有する世界」の中に入っていって、その一部になろうとしていたためでもあるのだと、しみじみ理解しました。(*´▽`*)
「じっくりと香水と向き合う」、とても共感します。
私も美術館はじっくりと鑑賞し、更に最後に一番気に入った作品をもう一度鑑賞してから帰るほどですが、
本当、芸術品はきちんと「鑑賞しよう」という気で向き合わなければ、伝わるものや得られるものはないと思っています。
特に香りはどうしても慣れ親しんだものほど好きになるのが簡単なため、多くの人が嗅いだことないような、香水らしい複雑な香りは敬遠されがちですが、そういったものこそ、新しい世界を知るチャンスを秘めていると思います。
昨今は手軽な選択肢ばかりが豊富になっているため、「自分の好き嫌いに当てはめて香りを判断する」といったスタイルを取ることが正しいように感じてしまうこともありますが、もう一歩勇気や興味をもって「その香水の持つ世界を知ろう」という意識で向き合い、それまで知らなかった全く新しい香りを自分の感覚の中に取り入れる方が、私は結果的に何倍も有意義かつハッピーな気持ちになれます(*´▽`*)