ふわふわムスクとローズが奏でる、暖かで優しい世界。
霞、羽衣、綿菓子、天使の羽。
ピュアだったり、セクシーだったり、愛くるしかったり。
様々な「ふわふわの種類」を持った、まとえば笑顔になれる香水たちです。
もくじ
キム カーダシアン フルール ファタール
* Kim Kardashian Fleur Fatale *
香調:フローラル・ウッディー・ムスク <レディース>
フェミニンな石鹸系。
香りで羽衣を作るような、ふわふわ感がたまらない香水です。
2014年発表 *
<トップ> 天女の真っ白な指先が、バイオレット(ニオイスミレ)の糸を紡ぐ。大地の香味を空に引き出し、薄く割いて、石灰を砕いたような澱粉質と共に撚りをかければ生まれいずる、半透明の繊維。 その表面には光が遊ぶ。ベルガモットの淡いシトラス風味が珠となり、ブラックカラント(クロスグリ)の深紅色の酸味と苦味が成す波の上を、跳ね、転がり、フレッシュな甘さを漂わせます。
<ミドル> 糸を織機にかけると、バイオレットにアイリス(ニオイアヤメ)の風味が重なる。深く静かな澱粉の香が横たわり、そっと天女が息を吹き込めば、経糸にはティーローズの精が、緯糸にはピオニーの精が宿る。 白茶と紅茶をブレンドした様な清々しい香を綜絖に、花の蜜めいた生き生きとした甘酸っぱさを杼がくぐらせ、幾重にも重なる糸の上に、ほわりと薔薇が浮かび上がる。 清らかで、柔らかくて、控えめ。ほの白く発光する優美な香りが、華やかに広がります。
<ラスト> 薄く、軽やかに織り上げられた香りの布を、しなやかなホワイトムスクが縫い目なく衣に仕立ててゆく。砂糖と安らぎでできた温かな霞が生地を持ち上げ、糸の隅々にまで染みて膨らみながら、サンダルウッド(白檀)の滑らかな木の香りと、アンバーの甘いオリエンタル感を飲み込む。 ささやかな艶を帯び、風を捉え、纏う人の肌に寄り添い包み込む。 程よいパウダリー感が心地よい、ふわふわのムスキーノートです。
*まろやかなシトラス感が、バランスの良い明るいローズへと高まり、パウダリー感を増しながら、清らかなムスクに静まります。
風の無い午後。穏やかな日差しの中で微睡むような、幸せな心地のする香り。
真っ白に清潔で、命の輝きに満ちていて。肌の上に香りが遊ぶような、軽やかで擽ったい付け心地です。
甘さは意外なほど控えめ。人肌に暖かで、ムスクも透けそう。
石鹸のような曖昧なフレッシュ・フローラルを地に、爽やかなローズがスッと立ち上がる、洗練された、モダンな表情が素敵です。
[持続性] ★★★☆☆ [拡散性] ★★★☆☆
[ふわふわの種類] 繊細で清らかな羽衣系
[TPO] 春・夏・秋・冬 / デイタイム
クリード フルール ドゥ ブルガリ
* Creed Fleurs de Bulgarie *
香調:フローラル <レディース>
艶麗でロマンチック。
アニマリックなムスクが薔薇を解き放つ、幻想的な香りです。
1845年発表 * 調香師 Henry Creed Third Generation
<トップ> 午後の庭園に、ベルガモットの日が差す。時が止まった様な風の無い穏やかな空気に、スッと酸味が分け入り、そのすぐ後を曖昧なフルーティー感が包み込む。 光あれば影ありて。その影の色はごく薄く、シトラスの角を苦味が削ぎ丸めた様になだらか。そっと香りの明るい面に寄り添って、優しいコントラストを作り出します。
<ミドル> 日差しに暖められた大輪のブルガリアンローズが、大気を深紅に染める。 艶やかに伸びる薔薇の香特有の華やかさに、庭園の息遣いを閉じ込めたフレッシュ感、花片一枚一枚の表情を写し取ったかの様な繊細な揺らぎに、ほんの微かな蜜の甘さが編みこまれた、凛とした佇まい。 香りの輪郭は明瞭でいて、全体は石鹸めいた暈しで均された、気品に満ちた薔薇の芳香が表現されています。
<ラスト> 肌に宿った薔薇の精を、ムスクの砂子が昇華させてゆく。 ふわりと包み込む不透明な白の中に、石英の様に硬質な甘味と塩気が潜み、それがアンバーグリスの動物的な匂い・温もりと共に、ゆらゆらと溢れ出す。 薔薇を夢に誘い、鮮やかな色と香りに靄をかけ、スルスルと糸を解くように透かして。 時間の経つほどムスクは澄み、アンバーグリスは肌に潜り、長く続くラストノートは非常に感覚的な、「温度のような甘さ」と「人肌めいた艶かしいまだるさ」を呈してゆきます。
*シャープなベルガモットの香りが、ブルガリアンローズの典雅な華やかさに高まり、ゆっくりと温度を上げながら、艶麗なムスクに飲み込まれてゆきます。
英国ヴィクトリア女王に捧げられたという、気品あふれるクラシカルな香り。
クリーンで温かくて石鹸みたいに優しくて、そのくせミドルノート中盤からラストノート、残り香に至るまでがとんでもなく艶かしい、香水の魔力を感じさせられる逸品です。
まるで生きているような、血の通ったダイナミックな香りの波が、肌の上で弾け、うねるのが堪らなく甘美。
一分の乱れもなく綺麗に整えられた薔薇の底から湧き上がる、頭の芯がくらくらする妖しいムスクは神懸かり的。
香り自体はかなり強力なので、うっかり胸元につけようものなら鼻を殴られるような衝撃が。
そのため是非、(この香水に限らずアニマリック系は特に)、腰より低い位置の素肌につけて、ゆらゆらと体温・体臭と混ざって立ち上る気配のような香りを、嗅ぐともなしに嗅ぐような、香りに包まれている感覚の中に香りのディテールを探って楽しむような、そんなワイドな嗅覚を意識してみると、この香水の持つ魅力を余すことなく堪能できるかと思います。
[持続性] ★★★★★ [拡散性] ★★★★☆
[ふわふわの種類] 肌を這うような、捉えどころのない感じ
[TPO] 春・夏・秋・冬 / デイタイム・ナイトタイム
ナルシソ ロドリゲス フォーハー パルファム
* Narciso Rodriguez for Her Eau de Parfum *
香調:フローラル・ウッディ・ムスク <レディース>
瑞々しく清らか。
天使の羽根が生える香り。
2006年発表 * 調香師 Christine Nagel, Francis Kurkdjian
<トップ> きらきらした、雲の種のすぐ傍。モダンで柔らかなローズ(薔薇)の香がぐるぐる渦を巻き始め、その中心、一際明るい薄紅色に落ちたピーチ(桃)の雫が、隅々にまで深い潤いを巡らせ、雲に真新しい命を宿らせます。
<ミドル> ふわふわの雲が艶を帯び、熱をはらみ、ムスクの純白の翼が広がる。初列風切羽は清潔なパウダリー感を推力に、次列風切羽はアンバーのもたらす滑らかな樹脂の甘さ・温かさを浮力に変え、強く羽ばたき飛び立ちきます。
<ラスト> 空は高く、日は長く。地から立ち上る緑の気配は大気に洗われ、翼と遊ぶ風にはパチョリの香が混じる。青みは潜み、僅かに霞がかったハーバルなスパイシー感が羽毛をくすぐり。翼状筋が拍動させる心臓は、甘くとろけるサンダルウッド(ビャクダン)に似て。クリーミーな質感を全体に行き渡らせ、清らかで、優しい印象を残します。
*明るく瑞々しいローズが、滑らかな質感の甘いムスクに飲み込まれ、オリエンタルな厚みを増しながら、曖昧なパチョリ&白檀に落ち着きます。
ペールブルーの空に広げた、ほんのり桃色がかった大きな白い羽根。
心がくすぐったくて、世界はどこまでも広がっていて、目に映るのは生と希望、喜び。
手に足に電気が走って、背中が、心臓が、肺が、地球の鼓動と一体化して―――――。
そんな不思議な浮遊感と、幸福感。
嗅覚より早く心に響く、とても美しい香り。
清らかでない気分のときにつけると後ろめたさを感じるほど、尊くて、優しくて綺麗です。
ローズ石鹸系のこなれたローズ&ムスクを基調に、潤いと立体感、エンジェリックな清麗さを注いだまろい表情で、温かくクリーミー。
ピーチもパチョリも潤いやスパイシーさを感じさせるだけで、主張はしません。
ソフトな鼻当たりですが、朝つけて夜シャワーを浴びるまでしっかり原型を留めていてくれるあたり、(=体臭と混ざり切って正体不明がちにならず、この香水らしい香りのままで残っているあたり)、香りから受ける印象よりもずっと、香料自体は太く強力。
それぞれの香りが完璧に調和しており、一つ一つのニュアンスは曖昧。その分この香水の持つ純粋な「美」がストレートに飛び込んでくる、「鼻でなく感性で楽しむ香り」です。
シンプルで親しみやすく、嗅ぎ疲れもしにくいので、いつでも気持ちよく使える一本としても、じっくり付き合う一本としても優秀。
ナルシソロドリゲスフォーハーの持つ世界観に身をゆだね、纏ったときの「ふわっと羽根が生えるみたいな心地」を感じてみてください。
[持続性] ★★★★☆ [拡散性] ★★☆☆☆
[ふわふわの種類] とっても滑らかでクリーミー
[TPO] 春・夏・秋・冬 / デイタイム・ナイトタイム
エージェント プロヴォケーター
* Agent Provocateur Agent Provocateur *
香調:フローラル・ウッディ・ムスク <レディース>
『The 魔性の女』 ど真ん中。
サフランやシプレの効いた、艶やかでパワフルな香りです。
2000年発表 * 調香師 Christian Provenzano
<トップ> インディアン・サフランの土属性のスパイシー感がザワザワと湧きだし、ロシアン・コリアンダーが擦れたようなかさついた酸味を、フレンチ・マグノリア(木蓮)が神経をくすぐるようなまろく控えめな甘さを絡めます。
<ミドル> 夜露に濡れた大輪のモロッコ・ローズを瞬間凍結して粉砕したような、重厚で格調高い薔薇の香が勢いよく飛び散り、その破片をコモロ・イランイランとエジプシャン・ジャスミンが、ぎらついた青みと共に四方に反射させる。 ピカピカ、暴れる光の粒をコモロ・ホワイト・ガーデニアがまったりと、熟した花片のふくよかさで吸収します。
<ラスト> しっとりとした印象すら与える、粒子を極限まで細かくしたパウダリーなムスクがなみなみとあふれ出し、ハイチ・ベチバーが深い霧が暗く襲い掛かるような、泥だらけのウッディー感でそれらを穢す。ほんの少しの背徳が化けた甘美なアンバーが、いつまでも、とろり肌の上に。
*サフランのスパイシー感に往復ビンタされ、エロティックな薔薇に胸元引き寄せられ、アーシーなムスクに張り倒されます。
ものすごいパッションがボトルの中に。
好き嫌いの分かれやすい主張の激しい香りですが、心が燃え立つ夜には「もうこの他にはない!」というぐらいぴったりパッションを分かち合ってくれる、マグマ水蒸気噴火系香水。
シプレ的な要素とクラシカルなローズ香をとことんセクシー目線で追求した、「パワフルに誘惑してくるローズ」さんです。
とても重くはっきりとした香りなので、上半身につけるとかなりの確率で酔います。
下半身にほんの少し、ロールオンタイプのアトマイザーなどで点付けすると、なんとも鮮やかに香り立ち素敵。
ウッディー系(木々や土の香り)が全体を取り巻き支えていますが、全体の重さを決めているのはあくまで薔薇。
『ダーティーでエロティックなローズ!』
細かなニュアンスを突き抜ける、そんな強力なコンセプトにうっかり惚れてしまう一本。
ナルシソが陽ならこちらは陰。
洋風ならゴシックなドレスを、和風なら紅色の絹の襦袢をまとった、妖しい美女を髣髴とさせます。
[持続性] ★★★★★★ [拡散性] ★★★★☆
[ふわふわの種類] きめ細かなしっとり妖しい系
[TPO] 春・夏・秋・冬 / ナイトタイム
ニナリッチ レクスタス ローズ レジェール オーデパルファム
* Nina Ricci L’Extase Caresse de Roses *
香調:フローラル <レディース>
明るくてふわふわ。
真っ白なチュールを履いた、笑顔で踊るローズさん香水です。
2016年発表 * 調香師 Francis Kurkdjian
<トップ> シュッとスプレーから飛び出し肌の上で始まるのは、小さなバレエの舞台。 目を閉じ嗅覚に意識を向けると、小波のように香りが踊りだす。 始めは微かに。アルコールが蒸発すると共に、より豊かに。 ふんわりと広がる洋ナシの曖昧で控えめなフルーティー感が、ベルガモットの淡いシトラス的な明るさと手をつなぎ、軽やかにアントルシャしながら過ぎって行きます。
<ミドル> ライトを浴びて輝く鮮やかなブルガリアン・ローズ&ターキッシュ・ローズさんが、バシッとアラベスクを決める。凛と爪先を地に突き刺し、ツンと顎を上げ手を空へと伸べた、花びらの踊り。青みは無く、爽やか。典雅な薔薇の甘い香りが満ちる。 そのすぐ傍、野心あふれるピオニーさんが妙に威圧的な甘酸っぱいフローラル感を広げ。その影に隠れるようにして、小さなラズベリーとスズランちゃんが、フルーティーな軽さが勢いをつけた、華やかなステップを踏む。 舞台の上に在るのは、美しい調和。 ともすれば絵画めくローズを、微かな酸っぱさが、シュンと弾ける様なフレッシュ感が、活き活きと鮮やかに彩ります。
<ラスト> ひらひら、たくさんのムスクが群舞する。ほんの爪先で地を叩き、宙に浮くが如くの、軽い、儚いムスクの香。 完全にシンクロして、一分の乱れもなくピルエットするごと、ピュアでミルキーな甘い香りがフウワリ漂う。 柔らかな照明が作るかすかな陰影は、ヴァイオレット。ほどよいコクとすっきりとしたパウダリー感で、ムスクを磨き、宥め、舞台の余韻を残します。
*淡く曖昧なフルーティー感が、明るくはっきりとした薔薇&ピオニーの香りへ高まり、ゆったりと、滑らかなムスクに溶けていきます。
明るくて優しくて、癖もなく、ソフト。
ムスクも濃すぎず薔薇も派手すぎず、バレエの舞台を見ているような、心地よい高揚感と優雅さに浸れます。
薔薇をメインに構成しつつもピオニーがしっかり効いているのですが、安い香水の「ピオニー」にありがちなわざとらしい甘酸っぱさでなく、さわやか感を軽い酸味で演出したような、すっきりとしたフレッシュ感が印象的。
メインのローズを含め香料がかなり人工的なため、(妙な言い方ですが)、ちょうどうまくその人工香料のくどい部分を緩和しているような、安定感のある、好印象な華やかさを感じられます。
子供っぽくなく、かといってマダムっぽくもなく。
気軽に、気取らず楽しめる、きれいにまとまった香りです。
[持続性] ★★★☆☆ [拡散性] ★★★★☆
[ふわふわの種類] ほんわり柔らか
[TPO] 春・夏・秋 / デイタイム・ナイトタイム
グレ ルミエール ローズ
* Gres Lumiere Rose *
香調:オリエンタル・フローラル <レディース>
ソフトで繊細。
リコリスの効いた、甘くメルヘンな香りです。
2013年発表
<トップ> ほんわり、サラサラ。曖昧に。オレンジブロッサムの、清潔感あふれる円やかなホワイトフローラル感が、そよそよ風に運ばれてきます。
<ミドル> 薔薇だけど植物や花じゃなくて、薔薇なんだけど何処かお菓子めいた。「ローズ」のフェミニンな華やかさが穏やかに立ち上り、ピンクペッパー(ポワブルロゼ/香辛料の一種で、モダンローズのような香り)が、明るさと軽やかさを添えます。
<ラスト> リコリスの、グルマン感あふれるハッピーな「ビター×(スウィートの5乗)」な香りが湧き出し、綿菓子を高速回転させたような、甘味が芯になって刺さっているような蕩けたムスクが、モクモクとボリュームを出します。
*淡いホワイトフローラルの香りが、しっとりと色づくように繊細なローズへと移ろい、パウダリーな質感を強めながら、リコリスのノスタルジックな甘みに溶けていきます。
石鹸系・ベビーパウダー系に通じる、繊細で曖昧な香り。
むしろそれら以上に、ソフトで軽やか。
全体を包む霞がかったようなパウダリー・ニュアンスも、リコリスの苦みを抑えてお菓子ちっくな甘みだけを膨らませたようなラストも、まるでパステルカラーの毛糸で編まれたみたいに、優しくてメルヘン。
薔薇感は抑え目。かといってローズ特有の華やかさ抜きでは成立しえない、ぎりぎりのラインを上手く漂いながら、リコリスとムスクの甘さで独特の雰囲気を出した、ユニークな作品です。
[持続性] ★★★☆☆ [拡散性] ★★★☆☆
[ふわふわの種類] 快晴の午後に屋外で作る綿菓子
[TPO] 春・夏・秋・冬 / デイタイム・ナイトタイム
ザ ボディショップ ホワイトムスク スモーキーローズ
* The Body Shop White Musk Smoky Rose *
香調:オリエンタル・フローラル <レディース>
驚くほど煙たい!
薔薇とカシスグミとカップケーキを串に刺して燻したような、創作料理系香水です。
2013年発表 *
<トップ> ブラックカラント(カシス)の鈍く硬いベリー感に、ベルガモットがキャンディー的なゆるい酸味を絡め、ピンクペッパー(ポワブルロゼ)がほわっとロージーな甘やかさを重ねます。
<ミドル> タバコフラワーのドライで強いスモーキー感が立ち込める霧の中に、オレンジフラワーのすっきりとした甘さを纏ったローズの花びらが、ひらひら舞い踊ります。
<ラスト> ムスクのナマコのような弾力のパウダリー感がモコモコ膨らみ、フランキンセンス(オリバナム・乳香)がスパイシーなキレと温かな甘みを混ぜる。香り全体を通して、低く掠れたイモーテルの、ちょっと焦げすぎたキャラメルのような香りが、しゅわしゅわ滲み続けます。
*グミキャンディーのような濃くはっきりとしたカシスの香りが、ジワジワ焚き火で焙られながら薔薇の煙に包まれ消えて、気づけば甘いムスクが転がっています
ボトルのクールさからは想像がつかない、「なにこれ可愛い!」な香り。
芸術的な期待をしてはいけないけれど、文字通りの「スモーキーローズ」が立ち現れるおもしろい香水です。
全体に妙にイモーテルが効いていて、常にどこかグルマンちっく。
タバコフラワーやオリバナムはかなり「スモーキー」や「甘スパイシー感」にデフォルメされており、(良い意味で)素材本来の魅力とは別物に。
また、スモーキーのニュアンスは燻製並み。
漂うような妖しいスモーク感でなく、モウモウと燻してるレベル。
そして、メインの薔薇はポップでモダン。
植物らしさは一切なく、平面的、ありがちな合成香料のそれですが、嫌味はありません。
トップ・ミドル・ラストを通じてかなり甘めで、キョロキョロ可愛いのにテンションは低め。
どうしたらこんなにスモーキーに仕上がるのだろう、と気になるほど煙たいのに、香水自体は軽く、数時間もたずに消えてしまいます。
個性的なファッションと合わせたり、気分転換に。
[持続性] ★★☆☆☆ [拡散性] ★★☆☆☆
[ふわふわの種類] 燻してる系の濃い煙
[TPO] 春・秋・冬 / デイタイム・ナイトタイム
アジャン・プロヴォカトゥール(エージェント・プロヴォケーターのフランス語読み)は、とても気になります。
首都圏で香水の紹介イベントをしている、『La Parfumerie Tanu(略称LPT)』さんもこの香水を高く評価してます。
何でも、ヴィヴィアン・ウェストウッドの息子さんが立ち上げた、エロ下着メーカーだそうで、この香水は、彼のファーストフレグランスだそう。
2000年に誕生したにも関わらず、’70年代の香水の様な、時代錯誤なクラシックノートであり、それでいて、完成度が高い事で、高く評価されてるそうです(^^)
何でも、ジャン・クチュリエの名香、コリアンドルを髣髴とさせる香りだとか。
これだけ完成度が高いにも関わらず、意外と低価格で出回ってるとか。
もう一つ高い評価を得て居るのが、『メイトレス(フランス語で愛人の事)』。
こちらも、生まれて来る時代を間違えた系の、クラシカル路線の王道を突っ走る、アルデヒド系。
香りとしては、パルファン・ロジーヌのローズ・ニュに近い、硬質のパウダリーノートだそう。
まぁ、『エッチな匂いがプンプンするゼェ〜!』的な、色っぽい香りという事で間違い無いかと。こちらも気になる香水ですね(笑)
エージェント・プロヴォケーター、真摯にエロ万歳しているような香りが本当に素敵ですよ。
そもそもエロ下着メーカーさんなのですね。ものすごく納得。(笑)
これとメイトレスしか香りは知らないのですが、堂々としたクラシカル路線も、独特の美意識を貫いているところも、何だか勇気のわいてくるような、嬉しくなるような、不思議な魅力に満ちてます(*´▽`*)