キラキラした清潔な洋梨の香りが、グルマンニュアンスのほろ苦いコーヒー&ジャスミンへと飲み込まれ、クリーミーさと明度を上げながら、甘く濃密なバニラへと蕩けてゆく、超絶個性派香水。
エモーショナルに甘くて、センシュアルに影っていて、切ないくらいにスタイリッシュ。
真っ暗な夜の底に、梨の水晶とバニラの真珠をばらまいたような、煌らかな香りです。
『イヴサンローラン ブラック オピウム』
* Yves Saint Laurent Black Opium *
香調:オリエンタル・バニラ <レディース>
2014年発表 * 調香師 Nathalie Lorson, Marie Salamagne, Olivier Cresp, Honorine Blanc
もくじ
トップノート「暗闇の中に咲く、水晶みたいな梨の香り」
ペアー(西洋梨)の浅いグリーン感が透明感を際立たせた、芳醇な果実の匂い。その淡い光みたいな香りがぐるぐると渦を巻いて、ピンクペッパー(ポワブルロゼ)のロージー調の華やかさと、オレンジブロッサムのフレッシュ感を飲み込みます。
*きらきらした、洋梨&フローラルの香り。
上品で繊細。
香りは確かにフルーティーなのだけれど、香り方はどこか硬質で、香りの広がり方はシャラシャラ系。
ピンクペッパーとオレンジブロッサムは、それ自体は主張せず、洋梨の香りを上記のような質感に整えるためのギミック的な存在に徹しています。
すぐ下に覗きかけている暗く甘いバニラ&コーヒーを夜に見立てるならば、このトップは月や星々。
淡い金色の光があちこちに反射して、水晶の粒をばらまいたみたいにさざめく、ゴージャスな夜空の匂い。
スプレーしたてのキラキラ感から始まり、次第に濃厚なミドルに飲み込まれていく、力強くもどこか儚げな輝きが素敵です。
ミドルノート「センシュアルでグルマン。半影みたいなコーヒーの香り」
コーヒービーンズ(コーヒー豆)の芳ばしい苦みがスモーキーに漂い出し、その中心に、ジャスミンが青みがかったセンシュアルな花の香を咲かせる。そして、それらの仄暗い色と熱をあやすように、ビターアーモンドとリコリスがスッと鼻に抜けるお菓子的なほろ苦い甘みで、全体をフンワリ包み込みます。
*コーヒーショップのスタイリッシュな香り。
ベースのバニラに寄り添われながら、ミドルは香り始めます。
コーヒーは浅煎り系で、苦みは軽く、酸味は甘みに紛れる程度。
体質や気温によっては、ジャスミンがかなりはっきり香ります。
個々の素材はどれもお菓子のような曖昧さを纏っており、全体的に甘め。
柔らかな光を遮った指先の落とす、不鮮明に滲んだ影のようなコーヒーが、全体に独特の表情を浮かび上がらせています。
ラストノート「夜空に浮かぶバニラの真珠」
バニラの白く発光するような、清らかでクリーミーな甘さが濃厚にあふれ出し、パチョリがハーバルでスモーキーな、力強いスパイシー感を絡める。そして、シダーがまったりとした深みのあるウッディー感を、カシミアウッド(カシュメラン)が湿った曖昧なムスキー調の甘さを忍ばせ、バニラに真珠のような艶めいた干渉色を浮かび上がらせます。
*滑らかで艶のある、ウッディー・バニラの香り。
ミドルのバニラ混じりの仄暗いコーヒーが、明度を上げて輝きだすラストノート。
メインであるバニラの表情が、とても独創的で魅惑的。
ムスキー&ウッディーのしっとりとした深みやパチョリの鈍い響きと相まって、まるで結晶が重なり薄い層状をなす真珠のような、半透明の艶ややかさを湛えています。
また、バニラの傍のちょっと煙たいような感触に意識を向けると、パチョリが意外なほどしっかりと主張しているのに気付くのですが、それがちょうどミドルから続く都会的な表情を引き継ぎつつ、同時に緊張感は和らげてもいて、粋です。
こんな方におすすめ&香りを一文で表すと…
* バニラが大好き
* お洒落なカフェの香りに包まれたい
* 洗練されたグルマン系バニラ香水を探している
* ダークで煌びやかな世界に浸りたい
* フレーバーコーヒーの淹れたての香りに癒される
☆オリエンタル・バニラ調の、甘く煌めくバニラ&コーヒー香水。
キラキラした清潔な洋梨の香りが、グルマンニュアンスのほろ苦いコーヒー&ジャスミンへと飲み込まれ、クリーミーさと明度を上げながら、甘く濃密なバニラへと蕩けてゆきます。
コーヒー香水?どんなイメージの香り?
ポイント1.とにかく個性的。
フルーツやフローラルしか知らない人が嗅いだらびっくりするような、不思議で独特な香りです。
ポイント2.とても甘い。
あっさりした甘さじゃなくて、濃密で深い、香水でしか味わえないズシンと胸に響く甘さ。
⇒それらと共に、ガツンとコーヒーが立ち昇ります。
全体としては、フレーバーコーヒーのようなお菓子的なニュアンスをまとった、洗練されたフローラル・グルマン系で、第一印象は、まさに『バニラコーヒー』!
甘いのに媚びてない、都会的なスタイリッシュさが魅力です。
また、洋梨とバニラの存在感がばっちりあって、ジャスミンも芯が強い。(ゆえに、グルマン過ぎません。)
それらがコーヒーの作る暗闇の中にキラキラ輝く様が、妖しくて、そのくせどこまでも清潔で。
切なくなるほどセンシュアルです。
『Arp 273』明と暗、甘いと苦い。ブラックオピウムの描く世界
↑この写真は大・中・小3つの銀河が互いに重力で影響を及ぼし合い、薔薇のような美しい形状をなしている、衝突銀河『Arp 273』。
『ブラックオピウム』の香りの立ち方は、まさにコレ。
上部の渦巻き(大銀河「UGC 1810」)の中心部がちょうどミドルノートで、それがグルグル解けていき、ひゅっと抜けていった縦長のやつ(「UGC 1813」)がラストノートの色。
「UGC 1813」の銀河中心核の、星生成によってひと際明るく輝いているのがバニラの発生源。
このイメージをベースに、想像してみてください。
『水晶の洋梨に、真珠のバニラ。
霞がかった都会の夜を思わせるコーヒーとパチョリ。
それらが混ざり合って立ち現れる、独特の煌びやかな世界―――。』
ブラックオピウムの魅力を語るに外せないのは、そんな「明」と「暗」です。
また、正反対の性質のものが引き合い、斥け合い、調和する、いっそ哲学的なまでの懐の深さは随処に見られ、そのどれもが絶妙な表情を湛えて香ります。
たとえば、クリーミーな質感がグイグイと心を引き込むかと思えば、ふいにスモーキーな影が淡く立ち込め眩惑する。
エモーショナルな甘さは愛らしく微笑むのに、スタイリッシュな苦みは思慕を遮る。
せめぎ合っているようでいて、その実は表裏一体で、一歩引くと全てが噛み合っている完璧なバランス。
それはまるで互いが互いを引っ張り合う重力のような、『相互作用』がもたらす美しさにとても良く似ています。
オピウム=阿片
この「ブラックオピウム」は、1977年に発表された「オピウム」という香水のニュー・アレンジ作品。
とはいえ、一嗅ぎしたところでは、その2つの香水に関連性を見い出すのは困難。
なぜならば、オリジナルのオピウムを阿片そのものとすれば、このブラックオピウムは阿片がもたらす快楽にグッと焦点を絞ったような、甘やかな趣だから。
「オピウム」のスパイシーな痛みやインセンスの哲学的な謎かけが、阿片の作り出す闇、悪夢や苦しみならば、
「ブラックオピウム」のバニラは、阿片がオピオイド受容体に働きかけた瞬間の、βエンドルフィンがもたらす幸福感。
解けない魔法のかかった、夢の国の阿片。
なぜそれが「ブラック・オピウム(黒い阿片)」なのか不思議でたまらないけれど、例えば、「闇の中では光しか見えない」のだとか、「闇の底で見上げる世界」が「陽の光に晒された全体像」よりもある種の完全な美しさを持つのだというような、そういった「光以外の全てを飲み込む力」を「黒」に見い出すのならば、確かにとても、ブラック。
天が明るいと星は見えないけれど、暗くなれば、その輝きを見つけることが出来る。
都会の薄闇では霞んでしまうけれど、大自然の漆黒の闇夜の中では、驚くほど強い光が届く。
宇宙で恒星が発する光はずっと変わらないのに、地球の大気や星間物質による光の吸収によって、私たちの眼に映るその姿は、明瞭にも不明瞭にもなる。
「ブラックオピウム」のバニラを、そんな真っ暗闇でしか見ることのできない眩しい星だと捉えれば、名前やボトルの持つロマンや、その香りのクッキリとした明暗を、より深く楽しめるかもしれません。
甘美な……
オフィシャル動画
香水によって様々なオフィシャル動画がありますが、この動画は本当に「ブラックオピウム」の世界観にぴったり。
そして、見ていると無性に共感してしまいます。
ヒリヒリするような、乾いた、エモーショナルな孤独。
不安で、強気で、すごく何かを求めているのだけれど、行く当ても感情を吐き出す術も持たない、危い存在。
こんな必死な目をして夜の街を彷徨ったことって、誰にでもあるのではないでしょうか。
胸が痛くて、熱くて、どうしていいか分からない、あの焦燥感。
息苦しさが画面からリアルに伝わってくるだけに、美しく描かれた夜の街と少女が本当に素敵で、胸に燻る寂しさが熱を得て、チリチリと燃え出し力をくれるような、温かな心地に包まれます。
この「ブラックオピウム」の印象、最大の特徴は、そんな「エモーショナル」さにあると思います。
コーヒーが心をかき乱して、バニラが胸を締め付けて、ジャスミンは走らずにいられない芯の強さで。
動画に共感できる人ならばきっと、嗅いだ瞬間に「あ!」ってなります。
エレベーター編、雑踏編など色んなバージョンがあるのですが、一番ロングバージョンを見ると、「隣に寝ていたはずの男」を探して部屋を出るらしき様子が描かれています。そのため、個人的には雑踏編やディレクターズ・カット版が一番、抽象的でロマンチックだと思います。
特定の誰かじゃなくて、衝動に突き動かされて、自分や自分を満たす何かを探しているような。
私が「ブラックオピウム」に感じるのは、まさにそんな「エモーショナルで甘美な孤独、自由と強さ」です。
光と影を楽しむ、ブラックオピウムのまとい方
香りの拡散性が高く、持続力も高め。
バニラの甘さが印象的な個性派香水のため、ウエストや太もも、膝裏や足首など、下半身を中心に付けるのがおすすめ。
服装や季節、体温等との相性によって、バニラやコーヒーが強く出たり、ジャスミンが強く出たり……、といった変化が感じられやすい香りのため、ぜひ「心地よい」と感じられる量や、綺麗に香る場所等、色々探してみてください。
「甘さが重いなあ」と感じるときは、膝裏や足首など、鼻から遠い場所につけると、ほんわり穏やかになります。
また、デイタイム・ナイトタイムともに使え、デートやカジュアル、リラックスタイムや自分へのご褒美タイムにもばっちり。
世代を問わず満足できる「大人グルマン系バニラ」で、センシュアル、かつスタイリッシュな印象なので、ぜひ「自分スタイルのブラックオピウムの楽しみ方」を模索してみてください。
パンツスタイルやフェミニンな服装を始め、付けてみると「あれ?意外に似合うかも」という嬉しいサプライズに、きっと出会えます。
※この「ブラックオピウム」のアレンジ版に、「ブラックオピウム ニュイブランシェ」(ニュイブランシェ=白夜)という香水があります。
「ブラックオピウム」をライトにしたような香りで、バニラの明度もアップしています。
夏でも付けやすい優しい仕上がりなので、「重たい香りは苦手だけどバニラコーヒーは気になる……」という方は、ぜひ「ブラックオピウム ニュイブランシェ」をチェックしてみてください。
(紹介記事はこちらです→2016年 おすすめ新作メンズ&レディース香水10選)
季節外れ香水のススメ
本来ならば秋冬向けの、甘く濃厚な香り。
しかし、それを真夏の夜に一吹きすると、ほんの少しの非現実的な香りの感触を味わえる。
夏のぎらつく太陽が沈んで、地表に残った生ぬるく湿った大気。
そのゼリーとクリームの合いの子みたいな、しっとりとした軟質のカンバスに、香りの粒子が優しく吸い付いていく、独特の心地がつくる世界。
それはまるで、いつもの香水の別の顔。
たとえばこのブラックオピウムは、空気の冷たい季節の香り立ちからは想像できないほどの、情緒的な鳴き声をあげる。
まずスプレーした瞬間に感じるのは、愛くるしさに毒気が巻き付いた、熟れた甘さ。
冬に見せる洗練された表情とは異なる、縋るような、体当たりの甘さ。
それから、それぞれの素材が、次々と嗅ぎ慣れぬ香り方をする。
ある特徴は雄弁になり、ある特徴は寡黙になる。
バニラの底の木琴の音みたいな澱がこだまして、手を透かしたくなるような明るさをつくる。
その上にコーヒーは、鈍いグラデーションのかかった影を、幾重にも落とす。
パチョリのスパイシーさは息を潜め、シャラシャラとした青みが強調される。
常ならば澄ました洋梨は、林檎のような澱粉のまだるい気配をまとって、清潔であろうとするホワイトフローラルに艶を出す。
なみなみに注いだ蜜が、グラスから零れるのをじっと見つめている感覚。
夏の短い夜に蝉や蛍の儚い命を重ねるような切なさと、うだるような熱い季節の、今が永遠に続くかのような怠惰な心地を混ぜ合わせた、思春期真っ只中のブラックオピウム。
――そんな別の顔が、熱帯夜にだけ楽しめます。
TPOに合わせた使い方とは大きく外れますが、お部屋でのくつろぎタイムや寝香水など、自分だけの香りの世界にダイブするときに、ぜひ季節外れの香水とも戯れてみてください。
新たな香りの魅力に気づけたり、気温や湿度によってどれほど香り方が変わるかに驚けたり等、楽しみ方は色々です。
[持続性] ★★★☆☆ [拡散性] ★★★☆
[TPO] 春・秋・冬 / デイタイム・ナイトタイム
BlackOpium、楽しみにしておりました!本当に素敵で引き込まれる表現にうっとりです。この香水を選んでよかったと思い、より一層好きになりました。
そして真夏でもBlackOpiumをまといたい私には季節外れ香水のすすめがとてもしっくりきて、また香水の楽しみ方が増えました。
香水の世界を道案内してくれる妖精のようなリリーさんのブログ、これからも楽しみに読み耽ります。
yfさん、コメントありがとうございます。
また、長い間楽しみにしてくださりましたこと、本当に有り難う御座います。
yfさんのおかげで気合を入れてBlackOpiumと向き合うことができ、より多くを感じ、より多くを学ぶことができました。
いただいたお言葉を胸に、今後とも真摯に取り組んでゆきます。
これからも、一緒に香水の世界を探検していただけましたら幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。
オピウムのドジョウ作品最新作ですな。
ヒットした香水は、大抵ドジョウ作品が結構出てます。
オピウムもその一つ。
元々、オピウムは、イヴ・サンローランが、中国や日本の東洋美にインスピレーションを受けて作った香水。
初期のオピウムは、日本に昔からあった印籠をモデルにしたデザインのボトルでした。
このデザインのボトルを考案したデザイナーは、最初はこのデザインのボトルをケンゾーに出したのですが、日本人であるケンゾーには、あまりウケが良くなかった様です。
そこでイヴ・サンローランにこのデザインを出したら、大層気に入り、オピウムのボトルにしたのだとか。
ただ、香水なので、あまり凝った物にすると、莫大な金額がかかる為、ガラスボトルを印籠デザインのプラスチックケースに入れるという方法を取ったら、イヴ・サンローランは、怒ってしまったという逸話が残ってます。
イヴ・サンローランとしては、ボトルを漆の漆器で覆い、蒔絵を施した美しいデザインにしたかった様でした。
つまり、『印籠の中に香水を入れる』という発想。
印籠自体は、簡単な筆記具や、印鑑、薬を入れておく物でしたから、イヴ・サンローランは、その印籠の使い方を知っての事だったのでしょう。
初期のオピウムのボトルは、一貫して印籠風のデザインで、竹のレリーフが施されています。
現行品は、印籠ではなく、竹そのものをモチーフにしています。
ベル・ド・オピウム以外は、基本的に中国風を意識した作風になっており、一貫して東洋美に拘っている事が伺えます。
ベル・ド・オピウムは、中東風の香りになっている模様。というのは、『ナルギレ・アコード』が入っている為。ナルギレとは、水煙草。
水煙草といえば、トルコ。
恐らく、中東のエキゾチックな雰囲気をイメージしたのでしょう。
オピウムシリーズは、しっかりと東洋趣味というコンセプトがあった訳ですが、今回、新たに出現したブラック・オピウムはというと、何をコンセプトにしたのか分からない作品。
今までの東洋趣味からは、大きく懸け離れてる感が否めません。
寧ろオピウムという名前で出すより、別のタイトルで出した方が良くない?と私的には思った次第。
香りもボトルも元々のコンセプトから大きく懸け離れてしまっており、私的には残念な作品。
どうせオピウムと名乗るなら、最近香水業界で流行っているウードを軸にして、元祖オピウムの風味を加味した方が良かった様な気がしてなりません。
茉莉花さん、コメントありがとうございます。
イブ・サンローランがオピウムのボトルにかけたという、東洋美への深い想いや造詣を知り、改めてその魅力にしびれています。
シンプルながらも威厳のある印籠デザイン、美意識は文化によって様々なれど、これを「オピウム」というネーミングやあの独特の香りと組み合わせたセンスに、並々ならぬものを感じます。
漆器で覆われ蒔絵の施されたオピウムボトル……、どんなにか素敵でしょう。魅惑的な逸話からは、イブ・サンローランの「香り」に対する熱い想いまでもが伝わってくるかのようです。
そして、ベル・ド・オピウムのあの独特な雰囲気は、中東のイメージだったのですね。とても勉強になります。水煙草、一度は挑戦してみたいと思っている香りものの一つなのですが、ベル・ド・オピウムの要素の一つだと知り、ますます興味が湧いてきました。
ドジョウ作品……!ある意味では確かに。
しかしオピウムが元々、ネーミングの話題性自体にも積極的な部分があったと聞きます。
なので、そういった意味ではブランド的には必然性や、ある種の正統性を見い出せるのかしらとも。
東洋趣味といった面ではシリーズの一員とは言い難くとも、「オピウム(阿片)」というコンセプト自体にイブサンローランの拘りがあるのだとすれば、
「高濃度にコーヒーを配合」という冒険心を託すのに、これ以上ない名前だったのやもとも私は考えます。
これが「Opium in black」等でなく、「Black Opium」という造語的な性質を有している、という部分を最大限に尊重した見方でもありますが。
何はともあれ、香りもボトルも、とても気合の入った素晴らしいものですしね。
それにしても茉莉花さんのおっしゃる「ウード軸のオピウム」、実現したらすごく素敵そうですね。(*´▽`*)
元祖オピウムの東洋趣味に、深いエキゾチックな世界が融合したら……!想像するだにうっとりします。
イブ・サンローラン、本当に作ってくれないかしら。
そうそう、オピウムで一つ思い出したのが…。
『MCM(Mode Creation Munich)』から登場した、『OBELISK』が中々秀逸な作品。
MCMの記念すべき第1作目の香水で、1985年の作品。
イヴ・サンローランのオピウムや、CHANELのココのブームを追い掛ける様にして作られたそうですが、オピウムやココとは、趣きの全く違った何とも不思議なオリエンタル香水になってます。
ココはヨーロピアンオリエンタルで、オピウムは、中東・アジアンオリエンタルなのですが、オベリスクはというと、そのどちらでもないのです。
オベリスクというのは、天辺にピラミッドを載せた、裾の広がっている角柱の事。
古代エジプトを象徴するモニュメントの一つ。
そのモニュメントを冠した香水で、ひと吹きすると、脳内に色鮮やかな古代エジプトの壁画が映し出される様な、不思議な香り。
ココやオピウムとは違ったエキゾチックな香りで、時代が古代オリエントにまで遡ったかの様な感覚に陥る程に凄く強烈で個性的。
初めてこの香りと出逢った時、強い衝撃を受けたと同時に、その個性的な古代エジプトチックな香りに取り憑かれてしまいました。
私の中では、オピウムの影武者的存在です(笑)
もう廃番らしく、あまり売られてはいません。
ネットフリマやオークションではチョコチョコと見かけます。
私自身は、30mlの物を持っているのですが、また見つけたら買い置きしようと思ってます(笑)
MCMはあまり馴染みのないブランドなのですが、古代エジプトチックな香り……!とても気になります。
「古代」というところが、またすごい。
情景の浮かぶ香りって素敵ですよね。それが時代まで飛び越えさせてくれるものであれば尚更。
ところで香調に「オリエンタル」というカテゴリーがあるだけに、あまり意識したことがなかったのですが、アジア、中東、エジプト等、「オリエンタル」と一口に言っても様々に「(西洋から見て)どのくらい東方なのか」という違いがあることが、目から鱗でした(*´□`)・・・!
それぞれに香りの特色がイメージされることも、とても興味深く。
今でこそオードなど中東色の香りも流行っていますが、1985年にオピウムやココの作る流れの中で、エジプシャンなオリエンタルを……とは、なんだかとても粋ですね。
『OBELISK』、ぜひ探してみます。
オリエンタルといえば、ここ何か月か、以前茉莉花さんに教えていただいた「アラブ香油」を集めているのですが、まさに「オリエンタル」の多様さに驚いています。
オードやスパイス、アンバーも、西洋香水やエッシェンシャルオイル等のそれらから想像していたよりも、ずっとずっとインパクトのある香りで、改めて「匂い」の面白さをかみしめています。
日本だと、オリエンタル調の香水は、あまり人気がありません。
仏壇や葬式を彷彿とさせる香りが多い為でしょう。
CHANELのCOCOに対する人気の無さがそれを物語っています。
COCOを纏って出かけたら、『家に仏壇を置いてます?』とか、『葬式帰りですか?』と聞かれて、バッタリと纒わなくなったという話しをよく聞きます。
オリエンタル=お香=仏壇or葬式=死という図式が日本人には出来てしまってるからでしょうか。
普段からあまりお寺と接する機会の少ない人にとっては、葬式だけがお寺と関わる機会。
なので、お香=死と結び付き、暗いイメージとして付き纏うのでしょう。
なので、そういう香りに近い香水を敢えて避けてる感が否めません。
私自身は、元々からお寺や仏事には強い関心があったので、お香は専らお寺で使われているものに近い、伝統的な物が好み。
オリエンタル好みの始まりは、『お寺の香りの香水が欲しい』というのが主な動機。
お寺で焚くお線香や抹香に近い香り。
んで、様々なオリエンタル香水と出会う内に、オリエンタルの多様な世界と奥深さに酔い痴れて今に至ります(笑)
オリエンタルは、私にとっては原点ですね(^^)
なるほど、オリエンタル香水に多くの人は仏壇等を連想してしまうのですね。
私自身は「お寺巡り」等を通して、『お香の香り=(観光で行った)寺』の良いイメージが10代の頃から強く出来上がっていたため、オリエンタル香水でお葬式を連想する方が多いとは、目から鱗な視点です。
個人的には、お葬式でそんな良い匂いのお香を嗅いだ覚えがないというのもありますが(笑)
でも流石にお香の香りがするからといって、葬式帰りかと聞くのは、あんまりにも文化や文化への理解・姿勢としては寂しいですね。
香りに馴染みのない方にとっては「お香」の雰囲気だけで一律アウトなのかもしれませんが……。
また、お香が葬式を介して死と結びついているという図式は、「死を思わせるものを忌み嫌い、遠ざける」という文化自体が、そういったものに対してオープンな文化とはそもそもが異なるのだなあと、改めて考えさせられました。
私自身は今は亡き同居していた祖母が、毎日宝物のように仏壇をピカピカに手入れし、お供えものをし、年中の行事を大切にし、厳かに、真摯に毎朝手を合わせていた姿の美しさを見て育ったため、「忌み嫌うもの」ではなく、「尊重すべきもの」だと感じているということも大きいのかもしれません。
常に多くを語らず控えめだった祖母の、それらへの頑固な姿勢からは沢山のことを学び、また、彼女が『旅行』とお茶目な手書きラベルを貼った衣類ケース1つの「旅立ちのお道具」一式を準備したものを開けた際には、(正しい意味で)宗教の持つ意味や重要性を考えさせられました。
なので、お香=お寺の連想までは良いとしても、そこから「お香を思わせる香りを避ける」という発想、更にはオリエンタル香水が不人気の理由だとは、本当に心から「なるほど!!!」と、目から鱗が落ちました。
お香の香り、裏を返すと「それだけの深い魅力を持った香り」でもあると、歴史的に証明されてきたようでもありますが……。イメージって重要なのですね。
オリエンタル香水、本当に素敵な香りがたくさんありますよね。
オリエンタル系の持つ独特の神秘的な雰囲気には、「香水」の枠を超えた「香りの世界」の広がりを感じます。
なんだか書いているうちにオリエンタル香水熱がメラメラしてきました…!笑(*´▽`*)
はじめまして!ジジと申します。いつものぞかせていただいております。リリーさんの、愛と知識と素敵な言葉のセンスにいつもうっとりしています!「解けない魔法のかかった、夢の国の阿片」とか…!もう(๑˃̵ᴗ˂̵)わたしも、香水をはじめとする香りのものは大好きな1人です。でも、これ!と思える特別な香りには、まだ出会えていないと感じます。お店や本やインターネットの中でさまよっていた中で、幸運にもこちらのサイトにめぐり合うことができました。記事を参考に、いくつか試してみた香りもあります。また、もともと所持していた香水を違う見方で味わうこともできたり。とても楽しいです!これからも、楽しみにしています。まだまだ暑い日々は続きますが、どうかお体に気をつけてお過ごしください〜。
ジジさん、はじめまして!
いつもご訪問いただいているとのこと、更にはもったいないお言葉まで、本当にありがとうございます!
香りもの大好き仲間として、とても嬉しいです。(*´▽`*)
ジジさんの「これ!と思える特別な香り」、いつかきっと出会えることと思います。
見つけ出すのはなかなか難しくとも、楽しい探求の旅路となりますよう、微力ながらも色々な香りをご紹介していけたらと思います。
また、お楽しみいただけるサイトでいられますよう、愛と知識をたっぷりこめて更新してゆきます!
これらも、どうぞよろしくお願いいたします。
夏も真っ盛り、ジジさんもくれぐれもお体を大切にお過ごしください~。