ヴェルサーチ エロス フェム 途方もない希求と魔性の美

レモンとザクロの微渋フルーティーな酸味が、シトラス風味のジャスミンへと高まり、ラストはアニマリックなムスクに包まれる、いっそ残酷なほど、無邪気に誘惑する香り。

ギリシャ神話の愛の神、エロス。
その名を冠した話題の新作香水「ヴェルサーチ エロス プールフェム」は、名前のムッチリ感を華麗に裏切る透明感あふれる香り。

心がヒリヒリするような、なんとも高貴で美しい作品です。

versacefemme
ヴェルサーチ エロス フェム
香調:フローラル・ウッディ・ムスク <レディース>

トップノート「神話の扉をそっと開く、アロマティックに渋酸っぱい柘榴」

シシリアン・レモンのきらきらとした酸味が強く立ち上がり、カラブリアン・ベルガモットが上品な苦味と酸味のシトラスで深みを出す。そして、ポメグラネート(ザクロ)がピリリとしたフルーティーでちょっと渋い甘酸っぱさを大胆に広げます。

*レモンの酸味がきいた、ザクロの香り

「ザクロ」というと、私はトルコのザクロジュースとオスカーワイルドの「ザクロの家」を思い浮かべるのですが、これは何だか後者のイメージにピッタリの香りです。

ザクロの渋みを感じる独特のフルーティーな酸味に、レモンが魔法の粉のようにきらきらとした軽やかさをまぶして、「上品さ」の空気感をベルガモットの柔らかくてアロマティックな苦味が演出しているような感じ。

うっかり触ると肌が切れてしまいそうな、妙にスッと細く伸びていく、とても渋酸っぱいフルーティーノートです。

ミドルノート「ピュアで美しい、無邪気なほどストレートな“誘惑”の香り」

レモン・ブロッサム(レモンの花)のシトラス感あふれる明るいフローラルがふんわりと広がり、ジャスミン&ジャスミン・サンバック(ジャスミンティーなどに用いられる、香り高い品種)がセンシュアルかつ草の葉のようなねじれたグリーン感を絡める。そして、ピオニーがフレッシュな甘酸っぱさで深みを出します。

*シトラスの明るさをプラスした、優雅なジャスミンの香り

コテコテとした誘惑ではなくて、ふと肌の綺麗さに見とれてしまうときのような、清々しい「誘惑」。
爽やかなグリーン感とセンシュアルなフラワー感が絶妙なバランスで香ります。

ジャスミンがストレートに広がるのですが、サンバック種のおかげか、草花っぽさよりも、いくらかエアリーな印象です。

ラストノート「ヌーディ―なセンシュアル・ムスク」

ムスクのパウダリーな甘さに、アンブロクサン(アンバーグリスの香りを再現した合成香料)が豪奢で力強いアニマルノートを絡める。そして、ミルキーなサンダルウッド(白檀)を中心に繰り広げられる優しいウッディーノートが、香り全体をそっと落ち着けます。

*センシュアルでウッディーなアニマリック・ムスクの香り

アンブロクサンの温かみのある濃厚アニマルソースがきいた、ほっとする甘さのムスクです。

なんというか、「人肌っぽい」香り。
たまに香料の香りじゃなしに、めっちゃいい香りの女の子っていますよね。そんな感じの甘さ。そういう女の子の傍にいると、無性にその子に対して「お嫁さん」のイメージが頭の中に渦巻いて、ドキドキ&デレデレしてします。(私だけでしょうか・・・?)

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こんな方におすすめ&香りについて

* 爽やかセクシー系な香りを探している
* ジャスミンを中心としたフローラルが好き
* ザクロにドキドキする
* 渋酸っぱいのが好き
* 透明感あふれる澄んだセンシュアルさが欲しい
* エロス!

きらきらとした酸味が美しい、フローラル・ウッディ・ムスク。

ヒリヒリするようなレモンとザクロの渋酸っぱさが、センシュアルな濃厚ジャスミンへと花開いていくさまが、無邪気な自信にあふれているようで、とても素敵。
これを「愛の神エロス」や「誘惑」と結びつけるのであれば、こんな誘惑をばらまく姿は、残酷なほどに魅力的。

媚びたところのないスッキリとしたシトラス感と、それでいてフェミニンな魅力を感じさせるジャスミンが絶妙なバランスで香る、つける人を選ばない香水。エレガントな服装やメイクに映えます。

デートはもちろん、オフィスや学校にもばっちりの、爽やかなセンシュアルさです。

ピュアセクシーに決める、この香水のまとい方

爽やかな香りかつ拡散性も程よいため、ウエストやふともも、膝裏はもちろん、肘の内側などにつけるのもおすすめ。

香りの成分&いろいろ

<トップノート> シシリアン・レモン, カラブリアン・ベルガモット, ポメグラネート
<ミドルノート> レモン・ブロッサム, ジャスミン, ジャスミン・サンバック, ピオニー
<ラストノート> ムスク, アンブロクサン, サンダルウッド, ウッディーノート

2014年イタリア発表、2015年世界へ向けて発売 
* Versace Eros Pour Femme *

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[持続性] ★★★☆☆ [拡散性] ★★☆☆
[TPO] 春・夏・秋・冬 / デイタイム・ナイトタイム

オスカーワイルド「幸福の王子」

このヴェルサーチエロスフェムは、子供の頃オスカーワイルドが好きだったことを、ふと思い出させてくれた香水です。
無邪気なレモンとザクロの渋い甘酸っぱさが、澄んだジャスミンにとけていく独特のセンシュアルさと、愛の女神エロスの名を冠しているところが、彼の作品集「ザクロの家」に出てくる、「星の子(The Star Child)」のナルシスティックな主人公や、「王女の誕生日」の残酷な王女を連想してしまいます。

ワイルドは、学校の英語学習が気に入らなくて、何か素敵な文章で英語を覚えたいと思い、どこかの古書店でたまたま手に取ったのが出逢いでした。「The Happy Prince」は今でもほぼ暗唱できるほど、繰り返し読んだ作品。

いろいろな感想や見かたがあるのでしょうが、私がオスカーワイルドの作品を読んで感じるのは「途方もない希求」です。

たくさんの宝石で飾られた金ぴか像の「幸福の王子」――名を尋ねられて、自らを「I am the Happy Prince」と名乗り、
悲しみのない、美しいものに囲まれた生涯から一変、死後に町を見渡せる場所に像としてたてられて以来、生前は知ることのなかった町中の醜さと不幸にショックを受けているのだが、心臓が鉛でできているため、泣くことしか出来ないという、
――そんな王子の「自分の像についている宝石や金箔を、苦しんでいる町の人に配って欲しい」という願いを、渡り鳥の小さなツバメが、段々と寒くなっていく町で一つ一つ叶えていってあげる物語。

「happy indeed I was, if pleasure be happiness. So I lived, and so I died. 」
なんてハッと胸の痛くなるような「Happy」で自らの人生を定義し、
いろんな感情をなくしてしまった様子で、ひたすら
「Swallow, Swallow, little Swallow, will you not stay with me for one night, and be my messenger? 」と呼びかけては、「剣についているルビーを、病で苦しむ親子のもとへ」、「崖っぷちの劇作家に、(目でもある)サファイアをあげてくれ」とおつかいを頼み、ツバメはぶつくさ言いつつも従い、その先では人々の喜ぶ様子が描かれていく。

仕舞いには残ったもう片方の目のサファイアまでをもマッチ売りの少女にやって欲しいと願い、それを叶えたツバメは、全盲になってしまった王子の傍にいることを決める。

それからの日々は、どこか諦めにも似た穏やかさで進み、全身を覆う金箔が町中の困っている人々へと渡り、町に笑顔が増えるにつれ、王子の体は灰色になっていく。

そして、時期を逃した渡り鳥のツバメはいよいよ寒さに凍え、王子にさよならを言う。
「ついにエジプトへ行くのだね」と喜ぶ王子に、ツバメはこんなことを言います。

「I am going to the House of Death. Death is the brother of Sleep, is he not?」

それから、最初で最後のキスをして、ツバメは足元に落ちて死んでしまい、王子の鉛でできた心臓は割れてしまいます。


……というお話です。
オスカーワイルドの作品で描かれる「美」への執着と、それを失っていく様子や、醜さや恐怖、
はたまた「美」をふりかざす無邪気さと残酷さが詰まった童話集が、「ザクロの家」。

幸福の王子はこのシリーズではありませんが、「途方もない希求」のもとに、破滅(救いかもしれません)へと突き進んでいくところが、何とも切ないというか、動揺するというか、心が静かになる感じで好んでいました。

「ザクロの家」の中では「The Star-Child」が一番印象に残っているのですが、この童話集、どのお話も「美を持つもの」の無邪気な残酷さが、恐ろしいのです。

あらすじだけ書くとドン引きなので省きますが、なんというか、オスカーの描く「美」への執着って、ナルシスティックだと一蹴してしまうとそれまでなのですが、そのあまりにも狂おしく突き進むさまと、傲慢さとか残酷さが、執着の対象が「外見」だということを取り除いて、たとえばもっと根本的な「自分の中の何かに対する執着」レベルで受け入れると、とても、心にくすぶる「わがままな感覚」に似ていて、そのため、あまり上手く扱えないそんな感情をたっぷり見せてくれるところが、彼の作品を必要としていた所以だったのだと思います。

私にとってオスカーワイルドの描くそういった作品の「美への執着」は、ムスクのようなけぶった甘いのをグラグラと煮詰めたような匂いで、マシュマロとゼリーを混ぜたような妙な手触りで、オルガンのビョ―ンと伸びた音に似ていて(ところでビジュアル系や韓国系アイドルの人の歌声って(つまり、たぶん喉をしめて、喉仏を高くキープした歌い方による発声)、パイプオルガンの音に似てません??)、薬臭いような渋いようなペタッとした甘酸っぱい味がして、禍々しい赤色のライトの部屋にいるみたいな感覚です。

鈍くなろうとして、鈍くなりすぎて自分を見失って、自分も人も何も愛せなくなって興味も失ってしまって、今は、もう一度、何かを愛せるようになりたくて、出がらしの茶葉に雨水を注いでみている自分には、ナルシストが、ふと、羨ましいような、嫉妬にもにた変な感情を掻き立てる。

きっと、中途半端でもやもやした自信のなさが承認欲求へと転じて、たぶんとても滑稽な姿だと思う。

けれど、ふとこんな記憶の扉をたたいてくれる、わがままな香りの香水に出逢うと、たぶん負の感情をマイナスなものだと隅に追いやらず、認めることが、ちょっとだけでもできるようになるから、こんな気分に振り回されるのも、「いかにも生きている人間らしい」ように思えて、なんだか楽しいような気がしてきます。

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