アルデヒド&シプレの香りが、濃厚フローラル・ミックスへと華やぎ、ゆっくりと、重いウッディーへ着地する、ゴージャスな香り。
エルメスカレーシュは、そんなトラディショナル系フローラルです。
名香特集第2弾の今回は、典型的なゴージャス系フローラルである、「エルメス カレーシュ」にスポットをあてました。
王道を突っ走るエルメスの、「ザ・マダム!」な香りの世界を歩いてみましょう。
エルメス カレーシュ
香調:フローラル・アルデヒド <レディース>
もくじ
トップノート「マダム!マダム!ねえ、マダム」
アルデヒドの暖かくて華やかな独特の脂感がゆったりと広がり、オークモスやパチョリなどのシプレがスパイシーで僅かに苦い大地の香りを、オレンジブロッサムがフレッシュなフローラル感を、ネロリ(ビターオレンジの花から採れる精油)が清らかで明るいほんのりシトラス風味の華やかさを絡めます。そして、レモンがキリリとした陽気な酸味を、ベルガモットが苦くて酸っぱいアロマティック感を絡めます。
*アルデヒドとシプレの、華やかで苦い、大地の香り
「シャネル5番」で有名なアルデヒド(アルデハイド)は、単体ではあまり良い匂いではない、脂肪族アルデヒドという合成香料なのですが、これを香水の中に微量混ぜると、なんとも独特の暖かな華やかさが生まれます。
そのフローラルとは異なったポヤポヤした華やかさに、シプレやほんのりとした清潔感あふれるオレンジブロッサムなどが包まれており、スプレーした瞬間、「あ、マダム!」と言いたくなる感じ。シトラス感はちょこっと明るいニュアンスを添えているかな、という程度です。
ミドルノート「これぞクラシカル!濃厚フローラル・ミックス」
アイリス(ニオイアヤメ)の茹でた人参と園芸用の土を混ぜたような香りがあふれ出し、ローズ(薔薇)がロマンチックな華やかさを、イランイランが粘るようなバナナトーンのリッチな甘さを絡める。そして、ジャスミンとリリー・オブ・ザ・ヴァレイ(すずらん)が草の葉にも似た独特なグリーン・フローラル感を、ガーデニア(くちなし)が濃厚でエレガントな花の甘さを添えます。
*パウダリーでフェミニンな、濃厚フローラルの香り
トップに引き続き、トラディショナルなマダム像を彷彿とさせる、クラシカルなフローラル・ミックスです。
派手で重めでパウダリー。エルメスらしい、当時の王道を突っ走りつつも絶対的なゴージャス感を醸し出している、とても華やかなミドルノートです。
ラストノート「ウッディーのお手本のような、ザ・木の香り!」
オークモスのインクにも似た、森の地面のような苦みのある香りに、サンダルウッドが柔らかでミルキーな、シダーが甘くスパイシーな、ベチバーが重く乾いたニュアンスのウッディー感(木の香り)を絡める。そして、ムスクが清潔感あふれる甘いパウダリー感を、アンバーが豪奢なアニマル感を、トンカビーンが桜の葉や杏仁を混ぜたような繊細な芳ばしさを添えます。
*濃いめウッディーな香り
これまた良い意味で典型的な、しっかりとしたバランスの良いウッディー(木の香り)です。
オークモスが強めに出ている点と、アンバーやトンカビーンなどのこってり甘い系もほんのり主張しているあたりが、あくまでもゴージャス感は外せないというエルメスらしいラストノート。
こんな方におすすめ&香りについて
* ゴージャス系のトラディショナルなマダム香水が欲しい
* アルデヒド・フローラルに興味がある
* バランスの良い、重めウッディーが好き
* パウダリー過ぎない、リッチなフローラル・ミックスに包まれたい
* 典型的な王道香水を嗅いでみよう
* マダム!マダム!ねえ、マダム!
⇒クラシカルなアルデヒド・フローラル
アルデヒド&シプレの香りが、濃厚なフローラル・ミックスへと華やぎ、ゆっくりと、重いウッディーへ落ち着きます。
「ザ・名香☆」という感じの、ゴージャス系クラシカルなフレグランス。
いろんなタイプの名香がありますが、「アルデヒドを使った典型的なフローラルってどんなの?」ときかれたら、このカレーシュか、シャネル5番をあげます。というか、この2本の香水は香りがよく似ています。
カレーシュのシプレ感を抑え目にして、イランイランを前面に押し出し、シベ(ジャコウ)を投入したら、シャネル5番ぽくなります。
シャネルはマリリンのイメージと「シャネルでごわす!」なブランド独特の香りの雰囲気が強いので、フラットにゴージャス系の典型フローラル・アルデヒドといわれたら、こちらが分かりやすいなあと思います。
オーデトワレ(この記事にかいたものです)とパルファムバージョンがあるのですが、基本的にはほとんど同じような香り。あえて違いを述べるなら、パルファムの方がローズなどの華やかな香りがほんのり強く出ていて、パウダリー感やシプレ感が(これは単純な濃度からくる香り立ちの差かもしれませんが)、ちょこっと重いかなあという印象です。
この香水のつけ方のポイント
かなり重くしっかり派手に香るので、太ももや膝裏に、ウエストならばおへそよりも低い位置に、少量つけるのがおすすめ。持続性(香りの持ち)も拡散性(香りの広がりやすさ)もかなりヘビーなので、かなり注意して使いましょう。
香りの成分&いろいろ
<トップノート> アルデヒド, シプレ, オレンジブロッサム, ネロリ, レモン, ベルガモット
<ミドルノート> アイリス, ローズ, イランイラン, ジャスミン, ガーデニア, リリー・オブ・ザ・ヴァレイ
<ラストノート> オークモス, サンダルウッド, ベチバー, シダー, ムスク, アンバー, トンカビーン
1961年発表, 調香師 Guy Robert
* Caleche Hermes *
[持続性] ★★★★★ [拡散性] ★★★☆
[TPO] 春・夏・秋・冬 / デイタイム・ナイトタイム
カレーシュは、マダムロシャスと並ぶ、ギイ師の傑作ですね(^^)♪
マダムロシャスは、1960年頃の作品。
若くして未亡人となった、エレーヌ・ロシャスに捧げられた香り。
カレーシュは、その一年後、1961年に誕生した香水。
カレーシュの香りは、マダムロシャスの面影があり、マダムロシャスよりも、少し光度を下げた香りとなります。
三大アルデヒド香の座を分かつ存在。
この二つの裏番長的な存在となるのが、グッチの『No.1』。
残念ながら、廃盤になってしまい、無いのですが、裏番長的な存在なだけあり、カレーシュや、マダムロシャスの香りをしっかりと継承した、フローラルアルデヒド(^^)。
是非とも試して見る価値は有りますよ(^^)♪
因みに、ギィ師の叔父、アンリ・ロベール師は、シャネルの二代目専属調香師を務めており、No.19が有名。
元々、シャネルのプライヴェートフレグランスとして、アンリ師に作らせたもの。
シャッキリしたグリーンフローラルで、正直言って、くつろげません(笑)
仕事モード全開にさせてしまう香りなので、下手に休みの日にコレを纏おうものなら、『何、怠けとんじゃ!たわけが!サッサと働かんかい!コノ役立たずが!』的な激が飛んで来そうな香り(笑)
当時のシャネルのお針子さん、この香りを嗅ぐと、『マドモワゼルのお出ましの合図』になる様で、戦々恐々だったそうです。
裏番長!(笑)
素敵な表現ですね。『No.1』というネーミングも興味をそそられます。
フローラルアルデヒドのクラシカル香水は、丁寧に作りこまれた感じがとても美しく、ライトな香水ばかり試した後につけると、「やっぱ香水はこうでなきゃ!」って感動します(笑)
No.19、シャネルのプライヴェートフレグランスだったとは知りませんでした。
あのシャネルさんのような上司にN0.19をバチッとつけて出てこられたら、本当に何だかすごい(笑)
私もこういった香りは茉莉花さんのおっしゃるように「シャキッとしなさい!」と激を飛ばされるような、ピンと背筋が伸びるような印象をまとったときに受けるのですが、シャネルのような人は、いったいどんな気分でこの香りを纏っていたのでしょうね。
想像すると、なんだか楽しい気持ちになります。
自分のために作らせる特別な香りがNo.19であるような、彼女の仕事にかけた情熱や人柄は、まさに憧れです(*´▽`*)
No.19繋がりで、優れたグリーンフローラルの傑作を一つ。
日本では知名度の無い、フランスのファッションブランド『Jacomo(ジャコモ)』。
1970年にジャコモ初のフレグランス『Eau Cendrée(オー・センドレ)』、翌年には、ジャコモで初のレディース『Chicane(シカーヌ)』が誕生。この2つは、既に成功を収めた香水ですが、レディース2作目となる、『Silences(シランス)』は、大成功を収めた傑作。
1978年に誕生し、奇しくもランコムのMagie Noirもこの年に誕生しています。
Silencesは、誕生したその年から『偉大なるクラシック』と高い評価を得ており、国際的な賞を幾つも獲得している実力派。
Silencesの特徴は、矢張り『王道クラシック』。
トップからラストにかけての香りの移り変わりがはっきりしており、物語で言うところの『起承転結』がしっかり備わっている事。
トップは、ガルバナムのドライでビターな一撃が鼻腔を貫きますが、それを過ぎると、ヒヤシンスやジャスミン等のグリーンフローラルが静かに花開き、オークモスやヴェティヴァーがそれらに彩りを添えます。
最後は、サンダルウッドやアンブレットシード等がクリーミーに蕩け、まるで最初の一撃が無かったかの様に静かに穏やかに優しく香ります。
このバランスの良さが大ヒットの理由ではないかと私は思います。
シャネルのNo.19と香りが似ている為、比較される香水ではありますが、No.19は、終始冷徹で自分の主張を頑として貫き通すのに対して、Silencesはそういった主張をはせず、静かに隣りに座って寄り添っている。
一見頭の回転が速くて、とてもクールなのだけれど、本当は人情厚くて、常に側に居てくれる。そんな雰囲気の香水なので、No.19よりは断然纏いやすい香水と言えましょう(^^)
高い評価を得ている香水ですので、今でも手には入りますが、日本では、輸入品を扱う通販サイトでのみ、手に入ります。
Silencesはヴィンテージボトルと現行品があり、通販サイトで手に入るのは、キャップとスプレーが一体化した現行品ボトルとなります。
ヴィンテージボトルは、キャップを外して使うタイプで、此方は運が良ければ、フリーマーケットやオークションで手に入ります。
ヴィンテージボトルに拘らなければ、現行品をオススメします(^^)
私自身は、ネットフリマで見付けた、ヴィンテージボトルを所有しています(^^)
茉莉花さん、素敵な香水を教えて下さり、ありがとうございます(*´▽`*)
起承転結のはっきりした香水、とても大好きです。
特に強烈なトップが柔らかくなっていく系の展開をみせる香水には、格別な癒しを感じます。
そして何よりガルバナムが一撃してくれて、かつ最後はクリーミーだなんて!素敵な予感しかしません( *´艸`)
ぜひ現行品『Silences』入手してみます。
No.19は独特の雰囲気がありますよね。
茉莉花さんのNo.19と比較したSilencesの表現を読むと、ますます興味が湧いてきます。
香りが似ていてもそれぞれの個性がはっきり出るとは、とても興味深く、同時に調香の素晴らしさもうかがえるようです。ぜひその個性にも注意して嗅いでみます。^^
また、「静かに隣に座って寄り添ってくれる」そういうさり気なさを持つ香水って、本当に素敵。
たまにすごく不思議なほどすんなり、まさに「馴染む」としか言いようのないほどしっくり纏える香水と出会うのですが、そんな時、改めて香りの神秘性であったり、逆にダイレクトに本能と響き合う香りの持つパワーに驚かされたりします。
香りなのにとても触覚的(?)で、視覚ですらとらえられそうで、感動と混乱が渦巻きます。
ジャコモの香水、どれも今まで名前しか聞いたことがなかったのですが、この機会に他のものも探してみようかしら。
Paradoxとか名前が素敵すぎます(*’▽’)