テンション高いセンシュアルなイランイランが、安心感と相手へのリスペクトを感じる優しいフローラルへ移ったと思ったら、ドドーンとオリエンタルなウッディーに飲み込まれる、香りの展開が美しい香水。
名香特集第10弾は、「惚気すぎ!!」なゲラン サムサラです。
ニコニコ幸せ気分に浸れる、愛くるしいフレグランスをご堪能ください。
ゲラン サムサラ
香調:オリエンタル・ウッディー <女性用>
もくじ
トップノート「愛の香り!って宣言しちゃう」
イランイランの粘るような濃厚バナナトーンの甘いフローラル感があふれ出し、ピーチ(桃)がフワフワとしたフルーティーなジューシー感を絡める。そして、ベルガモットとレモンがほんのり苦くてキリリと酸っぱいシトラス感で全体を明るくし、グリーンノート(草や葉のミックス)が爽やかな青々しさで奥行きを出します。
*フルーティーなイランイランの香り
「ジャン・ポール・ゲランが最愛の女性のために創作した」というエピソードに納得の、官能的なイランイランの甘さを前面に打ち出したトップノート。
それと同時に、フルーティーな要素やグリーン感も程よく感じられて、イランイラン香水の中でも特に上品で健康的な印象に仕上がっています。
本当にとても愛してたんだろうなあ、なんて幸せな気持ちになるほど、少女のような瑞々しさと、愛しい人に向けられる笑みのとろけるような甘い感覚を詰め込んだ、センシュアルでキラキラ明るい香りです。
ミドルノート「惚気はまだまだ続きます」
ジャスミンの草の葉にも似た優雅なグリーン感があふれ出し、ナルキッソス(水仙)が艶やかな甘いフローラル感を、ローズ(薔薇)がフェミニンな華やかさを添える。そして、アイリス(アヤメ)とバイオレット(スミレ)が園芸用の土と茹でた人参をミックスしたような、大地を感じさせるシャープなパウダリー感で香りに奥行きを出し、オリスルートが同系統でほんのり苦みのある淡い澱粉臭で深みを出します。
*パウダリーなジャスミンの香り
トップの「前頭眼窩皮質がお祭り状態!ドーパミンどばどばだぜ!!」という具合の恋のドキドキ感に満ちあふれた印象が、ミドルでは「……ああ、まじで彼女最高、女神すぎる!」といった恍惚状態に落ち着き(?)ます。
甘々だったジューシーフローラルが、シュシュッとグリーンなニュアンスとパウダリー感をまとっていく変化が、なんとも不思議で素敵。
ミドルで濃厚甘々に盛り上がる香水が多い中、パウダリー感で厚みを出して質感をふっくら系に変化させつつも、香り自体はトーンダウンさせるというアイデアが、流石ゲラン。独創的でテクニカルです。
ラストノート「永遠を誓っちゃう。来世も誓っちゃう。君は僕のソウルメイトだ!」
サンダルウッド(白檀)のミルキーで優しいウッディー感(木の香り)があふれ出し、バニラが華やかで癖になる甘さを、トンカビーンが桜の葉や桃の葉、杏仁を混ぜたような複雑な芳ばしさを絡める。そして、アンバーが豪奢でオリエンタルな甘いアニマルソースでコッテリ感を出し、アイリスとムスクがクリーンなパウダリー感で深みを出します。
*コッテリ甘い、濃厚サンダルウッドの香り
“サムサラとは、サンスクリット語で「永遠の再生」=「輪廻」を意味する言葉”というゲラン公式の説明をヒントにすると、このオリエンタル感むんむんのウッディーノートは、まさに「サムサラ」な愛の誓いの最終章といったところ。
とりたてて変わったノートではないのですが、特筆するならば、サンダルウッド以外のウッディー系はほとんど感じられず(=かなり柔らかいトーンのウッディー)、バニラやトンカビーン、アンバーなどの綺麗系の甘い香りがしっかり出ているところがポイントです。
インドのお香のような静かでミルキーな香りに、西洋香水的なまったりした甘さを絡めたような感じ。
東方趣味(オリエンタリズム)に神秘性を強く重ねた、幻想的で美しい、甘いラストノートです。
こんな方におすすめ&香りについて
* サンダルウッド(白檀)がしっかり香る香水を探している
* 恋して愛を誓っちゃう、ゲランの愛くるしい一面に浸りたい
* こってり甘い香りが欲しい
* インドのお香を西洋風にした香水って、理想すぎる
* テンション・ジェットコースターな香りの展開を堪能したい
* 「サムサラ(輪廻)」な名香に興味津々
⇒愛を誓う、極上オリエンタル・ウッディー
キラキラしたイランイランが、パウダリーなジャスミンへと高まり、ゆったりと甘い白檀に落ち着きます。
惚気すぎ!!
ってニコニコ幸せ気分に浸れる、愛くるしいフレグランス。
テンション高いセンシュアルなトップノートが、安心感と相手へのリスペクトを感じる優しいフローラルへ移ったと思ったら、ドドーンとオリエンタルなウッディーに飲み込まれます。
頭の中がお祭りになるような激しい恋に落ちて、ちょっと落ち着いて相手を見つめる恍惚とした時期を経て、永遠の愛を誓っちゃう、そんなテンションの変化をツルッと綺麗に描き切った作品です。
香り自体はどれもバランスが良く、また、個々の素材の持ち味、特にサンダルウッドやイランイラン、ジャスミンやアイリスなどの存在感がしっかりと出ているところがポイント。
ノーマルな香りの組み合わせのようでいて、トップのイランイランからの分厚いパウダリー感、ラストの西洋風インドのお香、といったユニークな香りの展開が意外にも、おそらくは調香の妙にて一本の香水として奇跡的にまとまっている、ゲランならではのテクニカルでロマンあふれる一本です。
恋から愛へ変化していく、あの時が止まったような幸福な時間を思い出させてくれます。
この香水のまとい方のポイント
拡散性(香りの広がり)・持続性(香りの持ち)共にとてもヘビーなので、ウエストや太もも、足首など、低めの位置に少量つけるのがおすすめ。香りの変化がかなりハッキリしているので、つけ直しはしない方がベターな香水です。
香りの成分&いろいろ
<トップノート> イランイラン, ピーチ, ベルガモット, レモン, グリーンノート
<ミドルノート> ジャスミン, ナルキッソス, ローズ, アイリス, バイオレット, オリスルート
<ラストノート> サンダルウッド, バニラ, トンカビーン, アンバー, アイリス, ムスク
1989年発表, 調香師 Jean-Paul Guerlain
* Samsara Eau de Parfum Guerlain *
[持続性] ★★★★★ [拡散性] ★★★☆
[TPO] 春・秋・冬 / デイタイム・ナイトタイム
ゲランのオリエンタルで最古の作品が、『シャリマー』。
1925年にジャック・ゲラン氏の手によって作られた香水で、サンスクリット語で、『愛の殿堂』。
400年前、インドを治めた大帝、シャー・ジャハーンとその妃、ムムターズ・マハールが、シャリマー庭園にて永遠の愛を誓い、愛妃亡き後、最愛の妃の為に、贅の限りを尽くした美しく最高の霊廟を建てて、妃を弔ったという流れ。
その霊廟こそ、あの有名な『タージ・マハル』。
その物語に発想を得たのがこの香水。
世界で最初に作られたオリエンタル香水として知られ、後に様々な香水に影響を与えたそうです。
私自身、シャリマーとサムサラどちらが良いか迷っていたのですが、地元のデパートのゲランのコスメコーナーでBAさんに、シャリマーの方を腕に吹き付けて貰ったところ、妖しく芳しい香りの虜に。
あまりの素晴らしい香りに、サムサラを蹴ってでも、シャリマーが欲しいと思う様になり、ネットのフリーマーケットで、未使用の限定品オードパルファンをゲットしちゃった(笑)
それだけ、シャリマーには、魔性の力があります(笑)
ゲランのオリエンタルフレグランスの原点たる香りなので、是非とも押さえておきたい逸品。
トップのシトラスノートが軽く香ったあと、アイリス、パチュリ、ジャスミン、ローズ、ヴェティヴァーがパウダリーな香りを。
ラストは、レザー、サンダルウッド、オポポナックス、ムスク、シヴェット、ヴァニラ、インセンス、トンカビーンがエキゾチックでむせかえる様な甘い香りを拡げます。
シャリマー!!
私もめちゃめちゃ大好きです。(*´▽`*)
ちなみにシャリマーは、「ベビーパウダーの香りまとめ」で「愛と母性の香り」として書く予定です。
ベビーパウダーにしてはちょっと妖しい魅力満載ですが…!(笑)
でも意外に一般的に「ベビーパウダーっぽい」って言われているものや、実際のベビーパウダーって、
「ベビー」って名前のわりに、なかなか精緻で複雑な香りが多い。
それこそ昔からある、というかあの古き良き「クラシカル香水黄金時代」の頃からあまり香りの方向性が変わっていないというのも要因かもしれません。
『タージ・マハル』、ほんとうに素敵ですね。
シャー・ジャハーンの深い愛情もさることながら、最愛の人を失ってあんなに美しい形で弔えるなんて、とても素晴らしい人格の持ち主だったのだろうなあ、なんて思います。
悲しみを昇華したものほど、この世で優しく美しいものってないように思います。
ジャック・ゲラン氏の香水は、香りもテーマもとても芸術的で、「ああ、これぞ香水!」なんていつもうっとりしてます(*´ω`*)