名香特集第一回は、ゲラン3代目の調香師ジャック・ゲランが、友人でもあるサン=テグジュペリの同名小説にヒントを得て創作したレディース香水、「ゲラン 夜間飛行」にフォーカスしました。
神秘的でエネルギッシュ、ロマンあふれる魅惑の香りを、詳しく見ていきましょう。
ゲラン 夜間飛行 ヴォル ドゥ ニュイ
香調: オリエンタル・ウッディ <レディース>
もくじ
トップノート「エデンの園の茂みから、こっそりコンニチハ」
ガルバナムのひんやりと引き締まったビターなグリーン感があふれ出し、ナルキッソス(水仙)がグリーンニュアンスの甘いフローラル感を絡める。そして、オレンジブロッサムがクリーンなフレッシュ感を、ベルガモットが苦くて酸っぱい上品なシトラス感を、レモンがキラキラとした酸味を、マンダリンオレンジがジューシーなフルーティー感を添えます。
*深みのある、ガルバナムのグリーンな香り
ガルバナムはセリ科の植物で、根茎部から採れる樹脂(レジン)が原材料。
独特のバルサミック(樹脂感)なグリーン感が特徴の、神秘的で美しい香りです。
そのビター・グリーンな香りに、清潔感あふれるフレッシュなフローラル感が絶妙に絡んでいて、甘いような苦いような、ほんのりシトラスのキラキラ感も混ざった、一度嗅いだら忘れられないトップノート。
まるでエデンの園の茂みの中にでも潜んでいるような、神秘的で厳かなグリーン感に包まれます。
ミドルノート「気品あふれる、厳かでパウダリーな貴婦人フローラル」
アイリス(ニオイアヤメ)とバイオレット(ニオイスミレ)の、シャープで静かな、森の土のような匂いがパウダリーに広がり、アルデヒドが柔らかな脂感で独特の温かさと華やかさを絡めます。そして、ナルキッソス(水仙)がめくるめくような甘いグリーン・フローラル感を、インドネシアン・カーネーションがスパイシーで快活なトーンを、ローズ(薔薇)がロマンチックな華やかさを添えます。
*アイリス&バイオレットの、パウダリーで華やかな香り
とても落ち着いた、静かで複雑なフローラルミックス。
アイリスとバイオレットはとてもよく似た香りで、茹でた人参のような独特の風味と、森の土や園芸用の土のような、ふっくらとした優しい大地の香りを混ぜたみたいな、厳かなパウダリー感が魅力のフローラル。
アルデヒドの人懐っこいような華やか感と相まって、まさに「貴夫人!」といった感じの、美しくも女性らしい香りです。
ラストノート「勇敢!正義感あふれるウッディー」
オークモスのインクにも似た苔むした苦みに、オリスルートがモソッした土っぽい澱粉感を絡める。そして、スパイスがピリリとしたバランスの良いエキゾチックな刺激を、サンダルウッドが柔らかなウッディー感(木の香り)を、ムスクがパウダリーでフェミニンな甘みを添えます。
*複雑でエキゾチックな、苦くてウッディーな香り
上等な万年筆のインクに、深い森の土の匂いのようなニュアンスを混ぜた、なんともホッとする大地感に、けっこうスパイスがきいていて、まさに、「これぞオリエンタル!」な印象。
しっかりパウダリーなのですが、甘さは控えめで、苦いといっても味覚的な苦みじゃなくスッと鼻先をかすめるような、軽妙な苦みで、サンダルウッドは優しいニュアンスの香りですが、しっかりウッディー感がとして浮き上がっていて……、とても、とっても、複雑な香りです。
ミドルの華やかな土っぽい香りが、ゆっくりとトーンダウンしながら、苦みやスパイシー感をまとっていく、文学的な香りの深まり方が、とても素敵。
こんな方におすすめ&香りについて
* オリバナムの香りの極上香水を探している
* ナチュラルなパウダリー感に包まれたい
* エデンの園の茂みに潜んでみたい
* 土の匂いが大好きだ
* 苦くてグリーンでパウダリーな、魅惑のオリエンタルを体験したい
* 夜間飛行したい
⇒厳かで気品あふれる、パウダリーなオリエンタル・ウッディー
オリバナムのビター・グリーン感が、パウダリーで温かなフローラルへと華やぎ、ゆっくりと、苦くスパイシーな大地の香りに落ち着きます。
これぞ、名香!といった感じの、とても静かで複雑なフレグランス。
「夜間飛行」は「星の王子さま」で有名なサン=テグジュペリの小説で、飛行機の操縦士でもあった彼の、大空への夢やロマン、冒険心を詰め込んだ物語。
暗闇の中を困難にぶつかりながらも、ひたすら宙、天を目指して飛行機を操縦していくという、ワクワクするのに苦しくて切ない、しかし同時に爽快でもあり、読むとふつふつと勇気がわいてくる、冒険ロマン小説といった感じ。
現代でいう宇宙のような、壮大なまだ見ぬ世界へ挑む、若々しい精神が描かれており、昨今流行りの冒険ものの主流のような「たくさんの助けてくれるお友達」がいない、まさに純文学的な孤独で孤高な姿に、イカロスを彷彿とさせる悲しい結末を重ねた、サン=テグジュペリの最高傑作です。
この香りは、そんな「夜間飛行」で描かれた勇敢な姿や冒険心にインスパイアされた、芯の強い、かっこよく生きる女性に捧げられた作品。
全体を通して、気品あふれる大人の女性らしい香りを丁寧に紡いでいきつつ、要所要所で苦みやスパイシーさといったアクセントを大胆に織り交ぜており、また、それらを包む静かなパウダリー感が一貫した表情やトーンを描き出している、
「まさに絶妙!」と唸りたくなる、複雑で繊細な、調香師ジャック・ゲランの腕が冴えわたる香りです。
香水って、そのまま花やフルーツの香りを楽しむためのものもあれば、この香水のような、物語や精神、ロマンが詰まった、「香水にしか表現できない複雑な香り」に触れるためのものまで様々にあって、もちろんシンプルな「香りのための香り」も大好きですが、こういった「香水のための香水」が、現代でももっと広く知られ、愛されるようになってくれたらいいなあ、と思っています。
この「夜間飛行」は、絶妙な香りの調合もさることながら、そのインスピレーションのもとやテーマ、名前にも据えたロマンあふれるイメージに、回転するプロペラや飛行機の翼をモチーフにしたデザイン的なボトルなど、
「芸術作品としての香水」に求められる全てを備えており、まさに、「名香」と呼ばれるにふさわしい作品です。
是非、この神秘的な香りに触れてみてください。
この香水のまとい方のポイント
香りとしての完成度もさることながら、大変肌馴染のよい香りなので、ウエストはもちろん、太もも、膝裏、肘の内側など、体温の高い場所に少量つけてみてください。天気や気温によっても香りの立ち方、感じ方が変わりますので、色んな日、色んな場所につけて、香りの変化を楽しんでみてください。
香りの成分&いろいろ
<トップノート> ガルバナム, ナルキッソス, オレンジブロッサム, ベルガモット, レモン, マンダリンオレンジ, オレンジ
<ミドルノート> アイリス, バイオレット, アルデヒド, ナルキッソス, インドネシアン・カーネーション, ローズ
<ラストノート> オークモス, オリスルート, スパイス, サンダルウッド, ムスク
1933年発表, 調香師 Jacques Guerlain
* Vol de Nuit Guerlain *
[持続性] ★★★★☆ [拡散性] ★★☆☆
[TPO] 春・夏・秋・冬 / デイタイム・ナイトタイム
夜間飛行は、フランス人女性が最後に辿り着く香水だと、何処かのレビューで読んだ事があります。
で、フランス人女性が初めて手にする香水が、グレのカボシャールなんだそうです。
本当かどうかは定かではありませんが、少なくとも、こういった香りは、教養ある大人が纏うべき香りとして大切に扱われていた事が伺えます。
夜間飛行まで辿り着いてしまうと、その香水以外、見向きもしなくなるなんていう話も。
女性の香りと言うより、『完成された人格を持った人間の香り』とでも言える様な、完成された香りである事には間違いないと思います。
夜間飛行にしろ、カボシャールにしろ、『あからさまに女である』事をアピールしない香水。
イメージするなら、ヴェルサイユの薔薇に出て来る男装の麗人、オスカル。
普段、女らしさを出さず、あくまで、男性として振る舞うオスカル。
しかし、プライベートでは、アンドレに恋心を寄せたりと、女性らしい一面を覗かせる。
夜間飛行やカボシャールには、そんな雰囲気を感じます。
フッと鼻を掠めた瞬間、『男物?』と錯覚してしまう様な、ドライで辛口な香り。
しかし、じっくりと嗅いでみると、女性らしい香りがひっそりと顔を出す。
仄かな女性らしさが逆に色っぽい。
あからさまに媚びを売らないし、無用な笑顔すら見せない。
一見すると、冷たい人に見える。だけど、その無表情の仮面の下には、母親の様な暖かさを秘めている。
可愛く、女らしく見せる香りは数あれど、敢えて『女らしさ』を引っ込めた香水は、数少ない。
夜間飛行、カボシャール、バンディ、オブセッション、ニュ、デューン、ジャスミン・ノワール…私の知っている物だけで、これ位かしら。
オピウムも入りそう。
下手なユニセックス香水よりもセクシーで魅力的な香り。
『完成された人格』、まさに夜間飛行にぴったりの表現ですね。目から鱗です。
フランス人女性の哲学は、もちろんそれが必ずしも個々に当てはまるものではないにしろ、自国の文化と自分を結び付けて語ることができる、そんな自尊心が眩しいなあ、なんて思います。
香水レビューを始めてはじめて「女」や「男」といったキーワードを扱うようになって、色々考えるようにはなったのですが、結局「女」が何なのか、正直私にはあまり分かりません。
相手の反応を観察することによって得た経験則では、
「下半身的に興味を引く“女”」か、「庇護や支配の対象としての“女”」か、「自分を愛し、自分の子の母となってくれる“女”」か、といった分類を無意識か意識的にか男性が行っているようには理解しており、そういった意味で「モテ」や「母性」、その他対人関係と性別を結び付けた単語を使用したりしているのですが、
なんというか、よく首をひねったり辞典を引いたりしてます。
脳機能の傾向やホルモンバランスなどは、身体的な性別の発現と関連付けられた統計的なものとしてはもちろん「確か」だとは思っていますが、個々の人間に焦点をあてるとやはりそれらは単なる統計でしかなく、また、標準枠から外れたものは男女問わず例外として処理されますが、加えて性別以前の何らかの差異がある者も含むと、「標準枠」に収まらない人間も数にすればかなり存在しますし。
そのため、薔薇やジャスミン等に含まれるいくつかの成分の点から、「生物学的に女を感じさせたり、魅力的に見せたりすることのできる“女らしい”香り」を定義することは容易ですが、
「夜間飛行」や「カボシャール」のような芸術、あるいは哲学、はたまた社会的役割としての意味を含んだ、「あからさまに女を主張していないけれども、色気のある“女”の香り」といった香水は、もう、本当に頭抱えて考え込みそうになります。
どう表現すれば適切か測りかねますが、なんというか、感覚的には理解できるし、他の香りとの比較による男性的な要素、女性的な要素、神経生理学、心理学的な側面から香りの美しさや安心感といった要素のバランスが絶妙であることは(それが一面的であったとしても)論じることは可能ですが、
そうじゃなくて、それらの香りの持つ「女」、ひいてはゲランやグレ、受け手の多くがある種当然のように理解し、共有する「“女”という概念」が一体どういうものであるのか。
もんもんと考えてしまいます(笑)
イヴ・サンローランのニュに至っては、コンセプトが『両性具有』。
イヴ・サンローランの死後、メゾンを引き継いだ、トム・フォードと三大調香師の一人、ジャック・キャバリエ氏がタッグを組み、2001年に誕生。
別名『ジャック・キャバリエ版夜間飛行』と称されている香水。
辛口のスパイシーオリエンタルで、フローラルノートを構成しているのは、オーキッドとジャスミンのみ。残りはスパイスとウッディームスキーで構成。
かなりメンズチックな香りなので、慣れてない人は、『え?これ、本当に女性用?』と首を傾げてしまう香り。
これにさらに拍車をかけるのが、ボトルデザイン。
ボトルは、コンパクトの様な格好をした、ダークシルバーの近未来的デザイン。
凡そ、化粧台に似つかわしくないデザイン。
残念ながら、香りもボトルもウケが悪く、呆気無く廃盤になってしまった逸品。
しかし、2011年に、復刻版シリーズ『ラ・コレクシオン』で復活。
こちらは、オリジナルより角が取れて、丸みが出た感じ。
それでも、復刻版というだけあって、オリジナル版と遜色のない香りに仕上がっています。
夜間飛行は、頑張っている女性を応援する様な香りですが、ニュは、どちらかと言うと、叱り飛ばしてる香り。
2000年代に生まれた香りという事で、この時代は、フルーティーフローラルのぶりっ子系が全盛期。
そんな時代に生まれたニュは、『何、男に対してブリブリしてんの?しっかりなさい‼︎』とでも言っているかの様。
だがしかし、そんな叱責の声は届かず、結局退場させられてしまいました(´Д` )
『ジャック・キャバリエ版夜間飛行』という別名が付くくらい、夜間飛行とニュアンスの良く似た香りなので、是非ともお勧めしたい香り。
コンパクト型ボトルのオリジナル版は廃番ですが、フリーマーケットやオークションで見つかる事があるので、オリジナル版が手に入るならば、是非ともオリジナル版をお勧めします(^^)
ジャックキャバリエ版夜間飛行!
興味深い香水を教えていただき、ありがとうございます(*´▽`*)
まだ入手できていないのですが、本当に素敵なコンセプトですね。
スパイシーなレディース香水って良いものが少ないので、貴重です。
「ぶりっ子系の香水」(笑)
なるほど、と腑に落ちる表現です。
私自身はそういった香水もシチュエーションに応じては好みますが、
こと「自分のために選ぶ香り」となると、マスキュリンなレディース香水か、
おもいっきりマッチョなメンズ香水に走ってしまいます(笑)
単純に素材のチョイス(主にウッディーなのかフローラルなのか)や明度、甘さの程度が気分に合うかどうかかと思っていたのですが、
そういう目線で見ると確かに、香りの仕上がりが「ぶりっこ」してるかどうかも重要ですね。
ニュのボトルデザイン、復刻版とオリジナル版で方向性が異なるのが面白いですね。
オリジナル版は茉莉花さんのおっしゃる通り、「叱りとばしている」ような。
復刻版は(復刻シリーズを通してですが)、「あなたの香りよ」とでも身を投げ出してくれているかのような(笑)
イブサンローランはベビードールが出会いだったのですが、知れば知るほど興味深いブランドです。
私の場合は、メンズ香水に走る事は無いですねぇ(^_^;)
直感的に『私の纏う香りじゃない』からだと思うからです。
ギリギリレディスな香りこそが私の纏う香り。
男らしいけど、男じゃない。だけど、女らしくもない。
この微妙な塩梅こそ、私という存在を表すのにとってもしっくりと来るのです。
あくまで、男性用は、『好きな殿方に纏って頂きたい香り』です(笑)
レディスは、かなり集めていますが、何れも淑女に相応しい、品の良いしっかりしたボディーの香りばかり。
中には、娼婦が纏う様な、妖しく艶やかで、挑発的な香りも。
気紛れな猫の様に、纏う香りを変えてます。
先週は、異性(!?)を誘惑する、シベットがガンガン効いた香りを纏っていたかと思いきや、次の週には、ストイックな香りを纏ってたり…(笑)
ま、この国の男どもには、何れも『おばさん臭い』で片付けられてしまいますがね(´Д` )
ま、シャネルのNo.5の香りの価値が分からない男なんて、こっちから願い下げですけどね〜。
女は男を選ぶ存在であって、男に選ばれる存在じゃあ御座いません(´Д` )
下手にぶりっ子した香りを纏って男に気に入られようとする方が間違っとる(´Д` )
香水一つで、女の品格が問われます。
男に媚を売る香り、所謂モテ香水ばかりを選ぶ女は、男の所有物になりたい=モノ扱い希望の女。
品の良い香りを選ぶ女は、知的で自立した女。
自分が良しと思った男性を相手にする。
大抵、モテ香水と言われるモノは、異性受けを狙った、チープな香りが多い。
低レベルな男に何時迄もチヤホヤされたいなら、それでもよろしいんですけどね。
私も本当に若い頃は、モテたいという思いから、チープな香りを纏ってましたけど、クラシック香水を纏う様になってからは、『別にモテなくて良いや。それよりも、本物を知ってる人をパートナーに選びたい。』と思う様に。
10代なら、可愛いだけで良いかもしれませんけど、20代後半にもなって、未だにモテ香水なんてモノを纏ってたら、『痛い人』です(´Д` )
せめて、グレのカボシャールをサラッと普通に纏い熟る位のレディにはなりませんと。
かく言う私はサラッとカボシャールを普段着の様に纏ってますけど(笑)
モテ香水のようなキュートな香りは、「女の子がわくわくする」何かがあるなあ、なんて私は感じます。
小さいものや可愛らしいものについキュンとする、おそらくは母性由来の保護欲だったり共感力だったり。メディアの煽る「モテる○○やモテテクニック」の是非はともかく、また、それらが必ずしも愛やまっとうな関係につながらずとも、「恋」はそれ自体が楽しいものですしね。
とはいえども、それこそお商売でやってる人でもない限り、「多くの人に心地よい」を目指すモテよりも、「性的トラブルのリスクをおさえ、かつ、本当の意味で自分を魅力的にみせる」ことの結果による「モテ」(といっては表現が軽々しいかもしれませんが)の方が、チヤホヤによる満足感以上の、「大切なもの」を得られるチャンスにつながる。
そういった意味で、「クラシック香水」をはじめ、プライドを持って「自分の香り」を選び、纏うことが、一番の「モテる香り、愛を引き寄せる香り」だと思います。
メンズ香水、私にとっては単純に「スパイシーでビタースウィートな香り」が好きだというのもありますが、なんというか、「俺は男だ!俺は強い!」と己を鼓舞する男性のような「弱さを忘れるため」の自己暗示であったり、はたまた女性的、ひいては本能的にホッとしてしまうような優しさに触れてしまうと感情に引きずられやすくなることから、あえて「華やかで優しいもの」を遠ざけたいときもあるという理由で、「自分自身のために選ぶ香り」の重要な選択肢の1つだったりします。
レディース香水ならば薔薇や桃、ムスクなどを好みますが、メンズ香水に求めるものはベチバーやスパイス類、タバコやアンバーグリスなど。一見正反対のようでいて、どちらも私が自分自身に求める姿でもあります。外見の性別的には女性であることを受け入れ利用も楽しみもしますし、別段男性になりたいわけでもありませんが、精神的にはいつもどこか「花でいたくない」と。良くも悪くもそれが原動力になっており、バランスのとり方にもなっています。
茉莉花さんのように「自分の内面や在り方」をファッション、ひいては対人関係や振る舞い等に反映できる方を、とても尊敬します。
「真の強さ」や「誠実さ」とは、そういったものだと思います。
リリーさんのタバコの香りのコメントで、オススメな逸品を思い出しました。
モリナールの『アバーニータ(日本ではハバニタの名で流通)』。
1921年生まれで、奇しくも、シャネルのNo.5と同じ年に生まれました。
クーバ(キューバ)の都市、アバーナ(ハバナ)をイメージした香水。
アバーナをイメージしたと言っても、爽やかなビーチを連想しちゃあいけません(笑)
酒と女と煙草に塗れた狂乱のアバーナの様子をイメージした香りですので、とてもドッシリとしていて、重たい香りです(笑)
アバーナと言えば、煙草が特産品。
元々、煙草の香り付けとして作られた香りだったそうです。
この香水の最大の特徴としては、『世界一香りが持続する香水』と言われる程の賦香率の高さ。
当初はオードトワレとパルファンのみでしたが、オードトワレでも、1度纏うと、終日香っていたそうな。
元々、煙草の香り付けとして作られた香りですので、煙草の香りに負けない様、濃厚な香りにしてある様です。
当に『紫煙と共に愉しむ香り』といったところ。
煙草の香り付けであった名残として、煙草の香りが含まれており、重厚なパウダリーの中に煙草の香りが見え隠れする感じ。
女性の姿に例えるなら、浅黒い肌に、括れの有るダイナマイトボディー、大きな胸の谷間に汗を溜め、ウェーブの掛かった長い黒髪を振り乱して一心不乱に踊るビキニ姿のオネイさん(笑)
グラマラスにして妖艶。そして、極上のセクシーを演出する香り。
下手なセクシー系香水よりも、ずっとセクシー。
セクシーだけど、嫌味が無い。
ジャン・パトゥのJOYとは、対極を成す迫力。
パトゥのJOYは、『ゴージャスの極み』を表現した香水ですが、対するアバーニータは、『セクシーの極み』といったところ。
モリナールは、このアバーニータに特別な思い入れがある様で、誕生した1921年以来、殆んど処方を変えずに、当時のままの香りを留めています。
2009年に、エディシオン・プリヴェのオードパルファンが出現し、その後の2014年には、パルファンとオードトワレを廃番にして、オードパルファンのみの展開となったそう。
当時のオードトワレは、持って居ない(そもそも手に入らない(涙))ので、分からないのですが、当初よりも透明感があり、纏い易い香りになっている様です。
それでも、透明感があると言うだけで、基本的な香りは変わって居ない辺りは、流石、モリナール。
2014年版のオードパルファンを持っていますが、モリナールのアバーニータに対する強い思い入れが感じられます(^^)♪
アバーニータの特長である、『終日香る』は健在で、煙草ノートも、ヘリオトロープのソーピーな香りも、オークモスのドッシリ感もしっかり健在です(^皿^)♪
シャネルのNo.5と同じ年に生まれている、御歳95歳のアバーニータ。
ゲランのミツコ、シャネルのNo.5と共に、後世に語り継いで貰いたい香りです(^^)♪
ボトルデザインは、ラリックのデザインで、女性のレリーフが浮き彫りになっています(^^)♪
タバコの香りはかなり好きで集めているのですが、レディースはカボシャール以外に良いものを知りませんでした。
素敵な香水を教えてくださり有り難うございます(*´▽`*)
香り自体めちゃくちゃ好みっぽいのですが、それと共に、シャネルNo.5と同じ年生まれなところや、ラテンのパッションを詰め込んでいるところにも、とても魅かれます。
茉莉花さんの描写してくださった「ビキニ姿のオネイさん」、サンバカーニバル風に脳内再生されました(笑)
媚びないセクシーさ。野性的で本能的な、たぶんある意味とても健全で健康な色気って、本当に素敵。
彼女たちのような姿を見ていると、「“生きる”って、こういう事だと感じたい」とか、「性」を自然に、喜びさえをもってその存在を崇めたくなる、というか。そういった強いエネルギーをもらえるところが好きです。
タバコの香り、私もとてもセクシーだと感じます。
メンズ香水に多い素材ですが、タバコは「女性へのアピール」というよりも、「纏う男性自身がセクシーさや自信を感じられる香り」のようにも思います。
女性ウケよりも、圧倒的に男性受けが良い系。
変な例えですが、アロマオイルや食べ物の匂いを「鼻」で感知するのに対して、タバコやレザーは「肌」で感知するような感じ。
香水のもつ「成分分析で見える“香り”以上の“何か”」を感じられる、興味深い素材だと思っています。
この辺を追求していけば、何か面白い、新しい「香りと性にまつわる」説や商品ができそうな。(笑)
タバコ、初めて自販機タバコでなく本物の葉巻やパイプの香りを嗅いだ時、「これが“タバコ”カテゴリーだなんて!」と驚き、感銘を受けたのですが、ダビドフをはじめシガーブランドは、あまり積極的に「タバコのフレーバー」以上にそれらの優れた香り、とりわけ「タバコ的な香り」自体を展開してはくれていなくて。
モリナールからそのような「煙草の香り付けのための香り」から派生した香水が出ていたとは、とても驚き&モリナールに興味がわきます。(*’▽’)